<パンダが来た道: 人と歩んだ150年>
愛くるしい容姿で人々を魅了し、動物園の人気者ナンバーワンをほしいままにする動物、ジャイアントパンダ。だが、その容姿ゆえに、多くの政治的取引の材料とされてきた。中国の秘境でひっそりと暮らしていたジャイアントパンダが発見された後、どのように世界に紹介され、政治的取引の材料となり、野生動物保護の象徴となったのか?本書はその歴史を明かしていく。
我々日本人にとっても、ジャイアントパンダは愛くるしい動物だが、欧米の人々にとっては日本人以上に保護欲をそそる動物であるらしい。そうでなければ説明できないほど、欧米人のパンダへの執念は絶大だ。19世紀の”冒険の時代”に前人未到の中国奥地に分け入り、はじめはその毛皮を、やがて生きたままパンダを持ち帰った。その間に中国と世界の政治体制は大きく揺らぎ、大戦も勃発した。何度も困難にぶつかりながらも、中国からパンダを連れ出した。それを実現するには初期には個人の情熱が大きかったが、やがて世界各国と中国両側の政府の思惑に大きく影響されるようになる。中国はパンダに政治的価値を見出し、世界もそれを利用した。パンダはただの野生動物ではなくなったのである。
日本もそのことから逃れられない。東日本大震災後、仙台市が中国に高額な料金を支払ってパンダを購入することに批判が集まったのは記憶に新しい。
本書はジャイアントパンダの生態についての記述は控えめだ。その繁殖方法の研究も含め、あくまでパンダと、人と、政治の物語である。
初版2014/01 白水社/ハードカバー
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