書評<Jリーグの戦術はガラパゴスか最先端か>
世界最高峰のヨーロッパチャンピオンリーグの試合をはじめ、各国リーグの試合が生中継で世界中で同時放映され、さらにネットでの情報発信により、情報伝達が非常に早くなるなかで、各国のクラブチーム、代表チームの戦術はバルセロナなど一部をのぞき、似通ってきているのは事実である。ワールドカップが戦術と選手の見本市と呼ばれ、4年に一度、サッカーのトレンドが変わる時代ではもはやなくなっている。
そんな現代でも、特徴ある戦術をとるチームがJリーグには存在する。2012年・2013年のシーズンの連覇を果たしたサンフレッチェ広島。ブラジル式のクラブ運営メソッドと戦術を維持し続ける鹿島アントラーズ。練習風景から衝撃を与えたオシム時代のジェフ千葉。本書は特徴ある新旧のJリーグのチーム戦術を解説し、それが生まれた背景を追っていく。
2014年現在のチャンピオンチーム、サンフレッチェ広島の戦術が世界的にも特徴があるため、本書が今流行の”ガラパゴス”という言葉を使ったタイトルになっているのだと思うが、各国リーグにも異端の戦術を取るチームはあるわけで、本書の実態はJクラブの中で際立ったチームの解説書である。
本書は基本的にはサッカーの戦術解説の本であるが、JリーグがJリーグである所以もはしばしに見ることができる。ヨーロッパ式とブラジル式のクラブ運営メソッドが混在するのはなぜか?構築に時間のかかる戦術をとるチームと、獲得した新戦力が即、チームに馴染むサッカーをしているチームが混在しているのはなぜか?フロントと育成が優秀なチームとそれ以外では、どのような差が出るのか?優秀な選手は海外を目指す現実に対応できたチームと出来ないチームの差は何か?直接的な答えが本書にあるわけではないが、こうしたクラブ運営の考察にも役に立つ良書である。
初版2014/02 東邦出版/ソフトカバー
« F-4C ANG Completed | Main | 書評<コルトM1851残月> »
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 書評<ベリングキャット ――デジタルハンター、国家の嘘を暴く>(2022.08.28)
- 書評<バルサ・コンプレックス “ドリームチーム”&”FCメッシ”までの栄光と凋落>(2022.05.25)
- 書評<冷蔵と人間の歴史>(2022.05.24)
- 書評<ザ・コーポレーション>(2022.05.23)
- 書評<狩りの思考法>(2022.04.19)
The comments to this entry are closed.
Comments