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書評<メキシコ麻薬戦争: アメリカ大陸を引き裂く「犯罪者」たちの叛乱>

1980年代後半、ラテンアメリカからアメリカ合衆国に流入する麻薬のルートに変化があった。主役がコロンビアのカルテルから、メキシコのカルテルに交代したのである。折りしも、メキシコとアメリカは自由貿易協定を締結し、メキシコ社会も大きな変化を迎えた時期でもあった。麻薬の密輸出はメキシコのカルテルに莫大な富をもたらし、その富を巡って各カルテルが血みどろの抗争を繰り広げることになる。そして、それを取り締まるべ警察は腐敗し、さらに事情を複雑にしている。本書はカルテルのメンバーやアメリカのDEA(麻薬取り締まり局)へのインタビューや緻密な取材をを元に、メキシコのリアルなカルテルの事情と、政府とカルテルの紛争というべきメキシコの現状を、余すことなくレポートする。

さほどマスコミのニュースに流れることはないが、ネットではメキシコの凄惨な殺人事件の画像を頻繁に見ることができる。首狩りをはじめとした、ある意味で中東でのテロよりも強烈な映像の原因は何なのか知りたかったのだが、本書は現状でベストといえるだろう。日本語訳ではかなり削ったとされる凄惨な殺人現場の様子が印象に残るのは確かだが、それ以上に本書はメキシコの”麻薬産業”の歴史を辿り、もはや政情不安としか言い様がない現在のメキシコ社会に至る原因をしっかりとレポートしている。国内外の脅威から市民を守るはずの軍が麻薬カルテルの殺人部隊の養成所になっている現状。地元警察が連邦警察と対立し、カルテル同士の抗争に加わる理不尽。麻薬の大消費地であると同時に、カルテルへの武器供給元となっているアメリカ。それらが、メキシコを”戦場”にしているのだ。
日本の企業の多くも、メキシコに工場を建設し、操業している。日本人が犯罪に巻き込まれないことを祈るのみである。

初版2014/03 現代企画室/ソフトカバー

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