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書評<ねずみに支配された島>

現在、人類は地球のあらゆる場所に進出し、自然を作り変え、多くの生物を絶滅に追い込んでいる。これは事実ではあるが、真相は少し違う。生物多様性を破壊しているのは人類ではなく、人類と共に各地に渡ったげっ歯類、すなわちネズミたちである。特に外界から閉ざされた島嶼部においては、少数のネズミの侵入によって、現地の固有種が食い荒らされ、絶滅という取り返しのつかない結果をもたらす。本書は世界各地の島嶼部におけるネズミの侵入による生態系の破壊と、それを取り戻そうとする人たちの戦いのレポートである。

本書は広義には生物多様性の維持に関わる本であるが、実質的には、貴重な固有種である海鳥や地上生活性の鳥たちを守る人たちとネズミたちの戦いのレポートだ。人類が大陸から太平洋南洋の島嶼部に乗り出した遠い過去から、ネズミたちは人類とともに生息域を拡げていった。ネズミの爆発的な繁殖能力と、際限のない狩りが、美しい鳥たちの楽園を破壊していく。その破壊の凄まじさを目にした科学者たちは、罠や射殺といった古典的な方法や、強烈な毒を混入したエサを空中散布するという大胆な方法まで、様々な方法でネズミを駆除していく。
そこにある種の疑問を抱いてしまうのも事実だ。固有種を守るという謳い文句は正しいが、だからといってネズミの駆除は正しいことなのか?例えばニュージーランド。我々日本人には自然豊かな国に見えるが、実は中世に進出した白人たちがほぼ完全に”作り変えた”自然だ。元々の生物相はほとんど残っていない。そんな人類に、ネズミを駆除する資格があるのか?美しい鳥たちを守るのもまた、人類のエゴではないのか?地球の生物史レベルで見れば、鳥類たちの絶滅もまた、自然淘汰ではないのか?
本書はネズミの駆除をほぼ肯定的に、むしろ英雄的な行為として描いている。自分としては、自然保護を使命とする科学者たちの英雄譚として全面的には肯定できないが、全面賛成の読者もいるだろう。自然保護とは何かを考えさせられる1冊である。

初版2014/06 文藝春秋/ハードカバー

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