書評<英雄への挑戦状―世界最高のサッカー選手論>
ワールドカップよりヨーロッパチャンピオンズリーグの方がサッカーのレベルが高い、と言われて久しいが、やはりワールドカップが世界各国リーグで活躍する英雄たちが一堂に会する機会であり、その活躍は注目を集める。本書はブラジルに集う、世界最高峰にいるプレーヤーたちをスペインのジャーナリスト、へスス・スアレスが紹介していく。英雄たちのプレーの特徴と、そのプレーを特徴づけるものは何か?彼らの心理にあるものは何か?鋭い筆致で分析していく。
本書はワールド・サッカー・ダイジェストにコラムを寄稿するジャーナリストによる、名プレイヤーたちの解説書である。その視線は一貫して”ボール・プレイヤーこそ至高”であることで、アスリート的な選手や、サッカーの楽しみと美しさを壊すディレクターたちはまったく評価しない。
それでいて、単なる”ファンタジスタ礼賛書”になっていないのが本書を読む価値のあるものとしている。シロウトから見ればエゴイストに見える選手たちの、奥底に抱える葛藤や戦闘的な心理。それらを知れば、ともかく献身的で、戦術的であることが求められるモダン・サッカーの中で、見るべき選手は誰なのか、ハッキリしてくる。コレクティブなサッカーを全世界が目指すからこそ、ブール・プレイヤーたちが浮き上がってくる時代でもあるのだ。本書は世界のサッカーを見る上で、読むべきテキストの一つである。
初版2014/05 東邦出版/ソフトカバー
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