書評<天冥の標VIII ジャイアント・アークPART1 >
”救世群”と呼ばれる致死性のウイルス感染者と、非感染者の争いから、地球と小惑星群に移住していた人類が”ほぼ絶滅”して300年。わずかに残った非感染者を絶滅せんと、プラクティスはなお執拗に残存人類の居住地へ攻撃を続け、非感染者はそれに対抗していた。だが、その戦いはたった1人、居住地の首領しか知らない。だが、ある意味で安定を保ってきた居住地にも、絶望がせまろうとしていた。壮大な物語が紡がれるシリーズ第8弾前編。
第8巻にして、ようやく”因果”が第1巻とつながった。争いを地底深くに押し込め、自らを太陽系外に拡散した人類であると”設定”し、過去を葬り去った人類が、ようやく真実を知ることになる。どんなふうにプロットを組むのかは推測するしかないが、10巻に及ぶ小惑星群に移住した人類の物語を、それぞれ違う人物の視点で描き、なおかつ因果を巡らせる著者の手腕は見事という他ない。
この物語も終わったわけではないが、SFやラノベ界は未完連作が多中で、著者の才能と努力には敬服するしかない。物語とは別に、そんなことをつくづく思わせる長編である。
初版2014/05 早川書房/ハヤカワ文庫NV
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 書評<戦争の日本中世史―「下剋上」は本当にあったのか―>(2018.04.10)
- 書評<激震! セクハラ帝国アメリカ 言霊USA2018 USA語録>(2018.04.09)
- 書評<炎と怒り トランプ政権の内幕>(2018.04.08)
- 書評<ダ・フォース>(2018.04.07)
- 書評<陰謀の日本中世史>(2018.03.20)
Comments