書評<〈生きた化石〉生命40億年史>
三葉虫の権威として知られる古生物学者の著者が、”生きた化石”と呼ばれる生物を求めて旅をし、長きに渡る地球の生物の歴史を辿る。”生きた化石”はカブトガニやシーラカンスといった有名なものから、アメリカの国立公園内の熱水泉に生きる細菌、香港の海岸のシャミセンガイ中国山地のイチョウまで、動物から植物、細菌まで多彩である。それらの生物が、地球上を複数回襲ったとされる大量絶滅イベントを乗り越え、なぜ現代にその姿を残すのか?古生物学者ならではの視点で考察している。
本作は”生きた化石”の考察をテーマにしているが、著者の紀行記でもある。実際に現地に行って対象の生物が棲んでいる環境を細かく観察・描写し、我々を非日常に誘ってくれる。そして化石の発掘を本職とする古生物学者の立場から、発掘された化石と”生きた化石”を比べ、なぜ環境の激変に耐えてきたかを検討していく。
著者が強調するのは”生きた化石”と呼ばれていても、その遺伝子は過去とは違い、激変していること。生物そのものが”生きた化石”であるのだけではなく、その生物の周辺環境含めて、かつての地球と繋がっていること。その2つである。そのことが進化論の証明となるのだ。
生物史をロマンチックに考察していく著者の表現力は健在である。
初版2014/01 筑摩書房/ソフトカバー
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