書評<あなたの見ている多くの試合に台本が存在する>
あらゆる国のプロサッカーの世界で、大きな問題となりつつあるのが八百長問題である。プレミアやセリアAのようなメジャーリーグから、小国のリーグまで、選手あるいはチームオーナーたちが試合結果を操作しようとし、その背後にはアジアや東欧のマフィアの存在がある。本書はその八百長問題を学術的に分析し、どの関係者が、どのような状況のもと、八百長が行われるかを分析していく。
本書のタイトルどおり、サッカーの試合にシナリオがあるなら、人々は興味を失い、スポーツ産業は破綻をきたす。現にシンガポールとマレーシアのプロリーグは崩壊した。自国のプロリーグを潰したアジアのフィクサーたちは、ヨーロッパのメジャーリーグに触手を伸ばす。もともと、ヨーロッパにも八百長は存在したが、動く金額も目的もまったく違う種類のアンフェアがはびころうとしているのである。本書はすでに逮捕された者たちを定量的に分析、さらにインタビューも統計的に分類し、一般的な八百長のイメージを覆す。そしてそれが、我々のごく身近にあることを教えてくれる。
Jリーグもまた、賭けの対象になっているといわれる。日本人の潔癖さがいつまでも続くとも限るまい。ワールドカップの早期敗退により、様々な改革が叫ばれているが、サッカー界を覆いつつある不正への対応も、忘れるべきではない。
初版2014/06 カンゼン/ソフトカバー
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