書評<人体の物語: 解剖学から見たヒトの不思議>
我々は自分の体について、意外と正確な知識がない。ルネッサンス以後のヨーロッパで解剖学が発達する以降はもっと人体に対する知識は少なく、一部の”自称”医学者が、経験的に人体の各部位の役割について知っているだけだった。本書は解剖学の歴史をまず紹介し、解剖学の進展がどのように人体の各部位の特徴、役割を明らかにしてきたかを辿る。
上記したように、我々は専門家である科学者や医者も含め、人体について限定的な知識しかもたない。本書の冒頭で「なぜ人は加齢すると夜にトイレに行きたくなるのか」を筆者が研究者や医者に問いかけるが、意外とまともな答えが返ってこない。それだけの問題でさえ、多くの臓器が関わり、複合的な問題なのだ。それを明らかにするには、人体を解剖し、それぞれの領域がどのような機能を持ち、どのような関わりを持つのか調べるしかない。本書はそうした”人体の神秘”に囚われた科学者たちを紹介しながら、人体の各部位が歴史的にどのように捉えられてきたのか、解剖によりどのようなことが明らかになっていったのかを紹介する。本書は”人体の解説書”ではない。人体を科学的かつ文学的に解読していく、「物語」なのである。
初版2014/08 早川書房/ハードカバー
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