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書評<本当はひどかった昔の日本: 古典文学で知るしたたかな日本人>

家族や地域のコミュニティのつながりが希薄となり、孤独死や児童虐待といったニュースが日々繰り返される日本社会。そうしたなかで、ノスタルジックに過去への回帰を訴える人が多い。しかしながら、子が親の”持ち物”だったり、女性に対する価値観が違う江戸時代以前は現代よりもっとひどい”虐待”が横行していた。本書は古い文献から、江戸時代以前の庶民の生活の実態を明らかにし、現代社会との違いを浮き彫りにしていく。


「昔はよかった」的な戯言が絶えることはないが、特に東日本大震災以降、こういう言質が多くなった気がする。震災により家族や地域のコミュニティが改めて見直されるとともに、原発が停止し、エネルギー問題が取り沙汰されるなか「かつての物質的には貧しいが精神的には豊かな時代に」みたいなスローガンが一部の人々の心の琴線に触れたのだろう。
しかしながら、ノスタルジックに振り返る過去の実態はそんなに甘いものではないことを本書は明らかにする。ニュースワイドショーが赤裸々に伝える話題よりもっと深刻な事例の数々。西欧的な人権感覚に染まった我々には特に違和感のある事件も数多く、テレビで放映される時代劇で描かれる物語は、一から十までフィクションなのである。東京の便利な生活に染まりながらも、過去に幻想を抱く、一部の方々に読んで欲しい本だ。

初版2014/01 新潮社/kindle版

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