書評<江戸しぐさの正体 教育をむしばむ偽りの伝統>
教育現場や行政にニセ科学やオカルトの類が紛れ込むのも珍しくない昨今だが、その1つが「江戸しぐさ」である。「江戸の商人たちが人間関係をスムーズにするための心得、マナー」だそうなのだが、実際にはそんなものはまったく存在しない。「江戸しぐさ」はどのように”創作”され、どのように公の教育現場に広まったのか?本書は「江戸しぐさ」を”創作”した人物の実態にまでせまり、それを明らかにしていく。
Twitterなどネットで強烈に批判されるオカルトの1つの「江戸しぐさ」。そもそも「江戸しぐさ」そのものがなんなのかから知りたかったので、本書は最適であった。江戸しぐさなるものがいかに現代的なマナーを積み重ねた創作であるかを明かしていくだけでなく、江戸しぐさに関わる怪しげな人物たちの実像にまでせまっていく。
さらに本書は教育現場で江戸しぐさを道徳やマナーと学ばせるとして学ばせる危うさまで踏み込んでいく。江戸しぐさとは結局のところ”偽史”であり、歴史と現実の塗り替えがいかに世論を歪ませるかは、その歴史そのものが証明している。できるだけ、多くの人に読んでほしい本だ。
初版2014/08 講談社/正海社新書
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