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書評<クジラとアメリカ: アメリカ捕鯨全史>

人類は古くから沿岸で捕鯨を行ってきた。イギリスからアメリカに渡った移民たちも先人と同様に、沿岸に流れ着いたクジラの死骸を持ち帰ることからはじめ、すぐに海に出て沿岸でボートと銛を使用した捕鯨をはじめた。アメリカの捕鯨は日本と異なり、鯨油と脳油を搾り出すことを主とした。船舶の大型化をはじめとする科学技術の発達と共に、捕鯨は大西洋から南氷洋、北氷洋へ拡大し、そしてホーン岬を回って太平洋に至ることとなる。だが、アメリカの主要な産業の1つとして栄華を誇った捕鯨は、石油の採掘のはじまりと同時に、急速に衰退していくこととなる。アメリカの一時代を支えた、アメリカの捕鯨の全史。

反捕鯨国の一国として知られるアメリカだが、その歴史には捕鯨がしっかりと刻まれている国の1つである。本書はアメリカにおける捕鯨の全史をまとめたものであり、独立戦争、南北戦争など、アメリカ開国以来の歴史には捕鯨が明に暗に関わっていることを解き明かしていく。日本でも、捕鯨の中継基地を確保するために江戸幕府に開国をせまったことはよく知られているが、本書は意外なほど、アメリカの歴史と捕鯨の歴史が密接であることを教えてくれる。例えば、独立戦争のきっかけとなったいわゆる”紅茶事件”に先立って鯨油を巡っての貿易摩擦があったり、植民地での反乱の最初の犠牲が捕鯨船の船員だったりするのである。本書はそうした捕鯨の歴史と共に、船長や船員たちの苦難に満ちた航海の実態も記されており、文化としての捕鯨も知ることができる。
分厚い歴史書であるが、意外にも早く読み進めてしまうほど、その内容は興味深い。
本書に捕鯨の賛否はなく、あくまでそのアメリカの捕鯨の歴史を扱ったものである。だが、世界のあらゆる大洋で鯨を追い、いくつかの種の鯨を絶滅寸前まで追い込んだ(船員自らも悲惨な死に目にあうことがあったとはいえ)のは事実であり、あの巨体から鯨油だけを取るという加工方法も含め、アメリカ人はもう少し、自らに批判的になってもよいのではないかと感じたのも事実である。和歌山あたりに出没する、不良外人たちは特に。

初版2014/09 原書房/ハードカバー


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