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<アメリカの卑劣な戦争―無人機と特殊作戦部隊の暗躍>

9.11同時多発テロ以降、アメリカ政府は「対テロ戦争」を宣言し、手始めにアフガニスタンを支配していたタリバンを、テロの主犯グループであるアルカイダを匿っているとして攻撃、その支配を瓦解させた。ここまでは、国際社会も納得の範囲の行動であった。だが、アメリカは止まらなかった。対テロ戦争を好機と捉えた当時のチェイニー副大統領とラムズフェルド国防長官は、国防省といわゆる統合特殊作戦コマンドの権限を拡大させ、イラク、イエメン、パキスタンなど、対テロ戦争を拡大させていった。CIAではなく特殊部隊を実行部隊に用いることにより、議会への報告義務はなくなり、実質的な”暗殺”といったアメリカの法律に照らしても違法ぎりぎりの作戦が実行できることになる。本書は民間軍事会社を含めて、極めて有事と平時が曖昧になっている「対テロ戦争」の実態をあますことなくレポートする。

9.11同時多発テロまで、特殊部隊といえば、その能力は高く評価されるものの、あくまで”日影者”だったと思う。それが対テロ戦争の初端となったアフガニスタン以降、ほぼ主役になったといっていい。小規模な部隊で危険地帯に潜入し、テロリストを拘束あるいは殺害する。それが現在のアメリカの戦争である。
だが、それは大きな問題を抱えることとなる。特殊部隊は”エリート中のエリート”と表現されることもあるが、”独走”もまた付き物であり、テロリストが民間人に紛れることもあって、大きな”付随的損害”を出すことも多い。そしてそれは怒りと憎しみをかい、新たなテロリストを生み出す。
もう一つ、近年の戦争の主役がUAV(無人航空機)である。当初は観測・偵察任務に従事していたUAVだが、すぐに攻撃能力も獲得することになった。近年の航空兵器はピンポイント攻撃を追求し、命中精度を高め、破壊力を減少させている。しかし、それでも付随的損害は出るものであり、そもそも情報の収集段階でミスがあれば、民間人の被害が増えるばかりである。上空を滞空するだけでUAVはその騒音で民間人の神経を逆なでし、そのときがくれば容赦なくミサイルが飛んでくる。アメリカの為政者にとっては自軍の兵士の損害が出ない理想の兵器が、これまたテロリストを生み出す土壌となっている(少なくともテロ撲滅のための協力など望むべくもない)。
本書は綿密な取材により、同時多発テロ以降、どうしてこのような状況にアメリカが陥っていったのか、綿密にレポートする。政治家の現実離れした理想と、自部門の権限を拡大させたい軍人の野望とが複雑に絡み合って出来上がってくる過酷な現実を、我々に教えてくれる。大統領がリベラル派と呼ばれる人間に代わってもそれは変化することはなかった。それはまさに泥沼としか言い様がない。対テロ戦争の暗黒面を知ることができる、必読の書である。

初版2014/10 柏書房/ハードカバー

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