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書評<現代アラブの社会思想 終末論とイスラーム主義 講談社現代新書>

「少数のテロリストと、大多数のイスラム教徒を一緒にしてはならない」。一般論として使われる常套句だ。しかしながら、これだけ世界の不安定要素になっていることを考えると、イスラム教への疑問を抱かざるをえないのが、”異教徒”である我々の本音ではなかろうか。本書は、日本では数少ないアラブの専門家である著者が、アラブで実際に販売されている思想書や一般書を分析し、イスラム教徒がイスラム原理主義へ向かう原因を探る。

やや古い本ではあるが、現在のアラブの不安定な状況を、思想的背景から説明しているものとして、個人的には非常に府に落ちる本であった。マスコミでよく説明される宗派対立や石油に関する利権争いとは別途として、もっと深い、思想的なところでイスラム教が抱える問題をよく説明していると思う。
筆者は本書の最初で「アラブの思想、哲学は停滞している」とする。第4次中東戦争の敗北と、エジプト大統領のナセルの死去で、民族主義と社会主義が挫折し、停滞する社会の原因をすべてイスラエルに押しつける考え方が定着する。それにコーランにある終末思想が合体し、いわゆる西欧型の民主主義と相容れない、原理主義的なものが台頭しているのである。本書の出版後に起きた、例えば世俗主義であったトルコのイスラム教への回帰や、”ジャスミン革命”の挫折も、イスラム主義への回帰が進んでいることの表れだと感じる。
新書なので、解説はややあっさりした面もあるが、アラブとイスラム教のまた別の面を考えさせられる本である。


初版2002/01 講談社/講談社新書

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