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書評<ジャスミンの残り香 ──「アラブの春」が変えたもの>

チュジニアでの独裁政権崩壊をきっかけに、アラブ各国で同時多発的に発生した民主革命や反政府運動は、3年を経て、表面的には”徒労に終わる”よりももっと最悪な局面を招きつつある。シリアでは民衆の犠牲者を多く出しながら内戦が終結する見込みはなく、エジプトでは実質的な軍事クーデターを経て、独裁的な大統領だったムバラクに無罪判決が出て釈放。さらには戦闘的なISなる集団が台頭し、国境を越えてアラブ全体の脅威となりつつある。本書は中東に様々なコネを持つ筆者が各国を取材し、ジャスミン革命と呼ばれたアラブのその後を描くノンフィクションである。

本書を強引にひと言で表現すれば「全共闘世代の見たアラブ革命のその後」であろうか。革命という言葉に一家言を持つ筆者ならではの視線で、エジプトを中心に取材し、アラブの現状をつぶさに追っている。なので、個人的にはノンフィクションではあるものの、筆者の価値観が深く入り込んだ文章で構成されたエッセイのようにも感じた。
一方で、丹念にアラブの春のその後を追うことで、日本では唐突にみえるIS(イスラム国)の台頭にいたるアラブの現状を、時系列で知ることができる。
筆者は「アラブの春」を決して徒労ではなく、権力に対して常に疑問を持ち、反抗的であろうとする若者たちの存在が常態化、その不安定さこそ、彼ら彼女らが勝ち得たもの、と結論する。権力を”絶対悪”と見なしがちな革命家ならではの思想だと思うが、現代の大方の民衆が求めているのはむしろ安定ではないか?そう思う自分は、そでに権力側に毒されているのか?自らの立ち位置を考えるきっかけにもなる本である。

初版2014/11 集英社/ハードカバー

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