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書評<アメリカ最強の特殊戦闘部隊が「国家の敵」を倒すまで NO EASY DAY>

9.11同時多発テロの首謀者だったオサマ・ビン・ラディン。その後、アフガンやイラクでの戦争を経てもなお、オサマはアメリカの主敵であり、逃亡中であった。CIAなどの諜報機関の長きに渡る捜索活動により、ようやくアメリカはオサマの居所を掴む。そこは表面上の友好国であるパキスタン。オバマ大統領は様々なオプションを検討した結果、アメリカ海軍特殊部隊SEALの中でも、さらに精鋭であるDEVGRUの派遣を決定する。本書は2011年に敢行されたオサマ殺害作戦<オペレーション・ネプチューン・スピア>に参加した特殊部隊員本人が書き記した、その作戦の全容を記録したものである。

”戦争文学の金字塔”と大げさなオビがついているものの、映画<ゼロ・ダーク・サーティ>を見ていたせいか、<オペレーション・ネプチューン・スピア>を取り扱ったディスカバリーチャンネルのドキュメンタリーを見ていたせいか、さほど新鮮な驚きはなかった、というのが正直な感想だ。本書の著者はアフガンやイラクで特殊作戦に従事したホンモノのDEVGRU隊員であり、彼がSEALの隊員になるまでの物語も含めてもちろん興味深い。本書は出版当時、アメリカでも「極秘任務を早々に大衆に明かすとか何事か」と批判されたそうだが、完全に守秘義務に引っかかると思われるような場面は意図的に記載されていない感じが拭えない。例えば、パキスタンに侵入する際に使用したブラックホークは公表されていないステルス仕様ではないか、と騒がれたものだが、それに関する記述はない。もちろん、著者にはどんなヘリに乗ろうと果敢に現場に飛び込むことにしか興味がなかったかも知れないが、そうした物事の細部が描かれないので、非常にあっさりしたレポートに思えるのだ。<オペレーション・ネプチューン・スピア>が成功裏に終了した作戦ゆえにドラマが少なかったこともあるかも知れないが。
世界的に情報の開示と拡散が加速度的に早くなっていく現代においては、本書のような告白本の翻訳と出版のタイミングは非常に難しい。本の中身よりも、そんなことを考えさせられた。

初版2014/11 講談社/ソフトカバー

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