書評<奇妙なアメリカ: 神と正義のミュージアム>
日本では博物館はさほど身近な存在ではないが、アメリカには様々なテーマを取り上げたミュージアムが各地に点在し、国民にとって非常に身近な場所である。科学、美術、歴史など様々なテーマを取り上げたそれらミュージアムには、現在のアメリカが如実に現れている。本書は8つの代表的なミュージアムを実際に見学し、アメリカの市民の多用な価値観を分析していく。
日本では、国や自治体ではなく、個人や団体が大規模なミュージアムを常設しているのは比較的珍しいが、アメリカはそういったミュージアムが数多く存在する。個人が運営するものであるから、そこには施設運用者の訴えをダイレクトに受け取ることができる。例えば進化論を否定する”インテリジェント・デザイン”を取り上げたミュージアムなどは科学の主流では決してないものだが、そこに多くの人が訪れるということは、進化論を否定する市民が数多く存在するということである。
このように、ミュージアムにはアメリカの”矛盾”が反映されている。核兵器に対するアンビバレンツな感情、ビリオネアへの妬みや嫉み。著者は”先進国アメリカ”が抱える問題を、8つのミュージアムを探訪して見事に指し示すことに成功している。
初版2014/06 新潮社/新潮選書
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