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2015.01.12

書評<理不尽な進化: 遺伝子と運のあいだ>

進化の”進”のイメージ、あるいはevolutionという言葉の意味から、人は生物の進化を定方向の、競争によるものと考えがちだ。しかし、生命の歴史の実態は気候変動や小惑星衝突による大絶滅の連続であり、生物種にとって”運”が大きく作用する。著者はそれを”理不尽な進化”と呼び、研究者たちの論争を紹介しながら、ダーウィンの時代からどのように進化論が肉付けされ、今の時代まで生き残る理論になったかを論じていく。

個人的には、本書はポピュラー・サイエンスの中でも、特殊な部類であるという感想を持った。<理不尽な進化>というよりは<理不尽な進化論>という表題が相応しい。第1章では前述した大絶滅による「生物の進化は実のところ運が96%を占める」ことを説明するが、第2章以降は我々、進化論に関する素人が陥りやすい誤解を正し、第3章以降は進化論のメインテーマである「適応主義」に関して論争を繰り広げた、ドーキンスとグールドという、2人の進化論学者がそれぞれ唱えるネオダーウィニズムを解釈していく。その解釈も、科学によって2人の論争を説明するというよりも、2人が用いた”言葉”の持つ意味を探索していくのだ。いわば「進化論」を哲学的に論じ、進化論という学問がこの社会に存在する意義を説明しているように感じるのである。この感じ方は、素人ではあるがネオダーウィニズムの知識が多少なりともあるからかも知れないが。
これも個人的な感想だが、断続平衝説を唱え、”歴史”を重視するグールドの考え方に共感していたので、本書のおかげでグールドとドーキンスの論争に整理がついたことは収穫であった。グールドが陥った”思考方法の罠”をなんとなくだが理解できた気がする。ただ、これも科学的事実を論じるというよりは、「ものの考え方」を論じているので、科学というよりは哲学を感じるのである。
科学書と哲学書を行き来する、不思議な読後感を持つ本であった。

初版2014/10 朝日出版社/ソフトカバー

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