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書評<モンサント――世界の農業を支配する遺伝子組み換え企業>

環境保護活動家から蛇蝎のごとく嫌われる、農薬およびGMO(遺伝子組み換え)種子製造・販売の巨大企業、モンサント。古くはベトナム戦争で使用されたオレンジ剤(枯葉剤)製造に関わり、農薬の特許が切れてからはGMO普及の一翼を担うモンサントは、生物特許で世界の農業を支配をもくろみ、アメリカ各国政府や関係機関とも癒着しているとして、グローバル企業の”悪役”として有名である。そのグローバル企業の歴史と企業活動を辿り、世界中を取材して、その実態を明かしていく。

本書が提起する問題点は集約すると2点。GMOの危険性と、それを提供するモンサントの生物特許をはじめとする極端な商業主義だ。
まずGMOについて。個人的なスタンスとしては、GMOは人口増に対する対応策の手段として”必要悪”と考えていた。遺伝子組み換え自体は、人類が農業を始めて以来、不断に行っているといえる。だが、本書でそのスタンスを変えられた。それは人体への影響というよりも、経済的損失である。農薬使用量を抑え、収量増加を約束したはずのGMOは雑草との交雑により耐性雑草を生み出し、農薬使用量はかえって増加する。遺伝子改変したトウモロコシや綿花は収量を落とし、さらにモンサントから購入する種子代金によって、農民たちを苦境に陥れている。「第二の緑の革命」どころではない。食糧増産を妨げているのだ。
2点目のモンサントの企業の姿勢の問題。アメリカをはじめとして政府の関係当局と癒着し、科学的な安全性が曖昧なまま、新たな農薬やGMOを農地に投入する。収穫したトウモロコシなどのGMOの種子を保管する”特許侵害”に関しては、容赦なく訴訟を起こし、財力で農民たちを圧倒する。
しかし、本書が提起するこれらの問題点に関する状況は、モンサントが本拠を置くアメリカでは変わりつつあるようだ。農民たちがモンサントの宣伝文句の虚偽に気づき、欧州や日本がGMOの輸入を拒否していることもあって、GMO農業に対する考え方は変わりつつある。モンサントの小麦のGMOは導入することが出来なかった。様々な訴訟に関しても、農民たちの辛抱強い戦いによって勝利を得つつある。
問題は途上国の方であろう。モンサントによるGMOの導入は、豊かな農業地を生物多様性を危険に晒すモノカルチャー耕作地に変え、しかも農民たちはそれによって貧困から救われるどころか、とんでもない自殺者を出す地域さえ生み出している。
極端な陰謀論に陥ることなく、事実に基づいて冷静に描かれた、グローバル企業への告発本として必読であろう。

初版2015/01 作品社/ハードカバー

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