書評<火星の人>
有人火星探査が開始されて3度目のミッションは、猛烈な砂嵐に襲われた。さらに、火星を離脱する寸前、折れたアンテナがクルーのマーク・ワトニーを直撃、彼は砂嵐のなかへと姿を消した。しかし、奇跡的にマークは生きていた!? 不毛の赤い惑星に一人残された彼は限られた物資、自らの知識を駆使して生き延びていく。
いや、面白かったです。旅のおともに軽く購入したのですが、旅の途中で読み終わるほど、のめり込みました。文章は生き残ったマークの記録ログ、という形で始まります。生来、明るく前向きでアイデアマンのマークは、自分のエンジニアと植物学者の知識を生かし、サバイバル・プランを立て、実行していく。もちろん、致命的な失敗もある。しかしマークはあきらめない。特徴的なのは、そこに悲壮感はあまりなく、とにもかくにもマークの前向きさに読者がどんどんと引き込まれていくのである。
マークが火星の過酷な環境と戦っている間の、地球側の物語も見事。エンジニアたちの戦いはアポロ13号をほうふつとさせるし、政治との駆け引きももちろん顔を出すが、不快に感じるレベルの官僚は少数。地球側もマッドサイエンティストたちがマークを救おうと、不眠不休で戦う。
本作は様々な賞にノミネートされているが、それも納得。誠実さとマッド(狂気)が同居する宇宙飛行士たちとNASAのエンジニアの姿をぜひ堪能いただきたい。
初版2014/08 早川書房/kindle版
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