映画<TNGパトレイバー 首都決戦!>を見てきた
ちょっと前になりますが、<TNGパトレイバー 首都決戦!>を地元シネコンの見てきた。ネタバレありで感想をメモ。
当方、押井守信者でありますが、かつてのパトレイバーの原案者集団である、ヘッドギアの方々のTNGパトレイバーへの微妙な反応を見るにつけ、この劇場版の前のシリーズに関しては、距離を取っておりました。ゆうきまさみ氏も、伊藤和典氏も大好きなのです。しかしながら、劇場版は少なくとも押井守カントクのファンからの評価は高いので、思い切って劇場に足を運びました。
舞台は”柘植の反乱”の14年後。かつての柘植のシンパが、陸自の最新鋭ヘリを奪取し、ベイブリッジへテロを仕掛けるところから物語は始まります。後はほぼアニメ版の「劇場版パトレイバー2」のストーリーをなぞっていきます。
CGと実写の合成は予想よりもショボくなく、しっかりとアクションの見せ場もあり、近年の押井守監督作品の過剰なまでの”映画感”へのこだわりは薄れた作品であることが第一印象です。犯人であるテログループ側の論理の描写はまったくなく、カントクの作品独特の街の風景を回しながらの独白は短め(このへんはディレクターズ・カットがあるそうなので…)であることが、テンポの良さにつながっています。それでいて、南雲さんが声のみで出演と、パト2のファンの心を震わせる場面も用意してあり、総じて、エンターテイメントとしてバランスの良さを感じました。
しかしながら、世間の評判は非常に芳しくないようです。いわくパト2の焼き直しであり、リメイクともいえない、と。それらのことは重々承知ですが、押井守信者としては、これこそが押井守の作りたかったパト2であり、ケリをつけたかったのだろうな、と監督の心中を察して擁護せざるをえないのです。虚構と現実を行き交う世界こそが押井守のテーマであり、明確な犯罪や思想テロとの戦いであったアニメのパトレイバー劇場版こそ、押井守監督としては妥協あるいは他のクリエイターたちと折り合いをつけた作品だと思うのです。製作環境として、そうせざるをえなかったのでしょう。それがヒットし、評価されたことは大いなる皮肉ですが。そういう意味で、本作のラストシーンこそが、ヘッドギアではなく、映画監督押井守がやりたかったラストシーンなのでしょう。
当たり前ですが、事前知識や思い入れによって印象が大きく変わるのが映画というものです。自分の押井守監督と榊原良子女史への思い入れが、映画を見る目を曇らせているかもしれません。それでも、久しぶりに2回目を見に行こう、と思った映画であることは確かなのです。
願わくば、押井守監督と、ヘッドギアの面々との和解が成らんことを。
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