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書評<地上最後の刑事><カウントダウン・シティ>

小惑星の地球衝突が確実となり、人類の存続が残り3ヵ月となった地球。緩やかに社会が崩壊しつつあり、秩序が崩れつつあるなかで、一人、刑事としての矜持を守る男がいた。「自殺」と簡単に処理してもまったく問題ない事件を、彼は執拗に追う。

形式的には一人称・現在完了形を多用する典型的なハードボイルド・ノベルだが、「小惑星衝突が迫った社会」という舞台を設定することで、特異な物語を紡ぎ出すことに成功している、稀有なミステリーだ。小惑星の確実な衝突という死の予告により、社会が緩慢な死に向かっている状況が、犯罪の謎を深め、人々の心理は自暴自棄にさせ、犯罪捜査を難しくしていく。ギリギリの理性を保つ人間、保てず、異常な行動に走る人間。犯罪捜査の教科書がまったく役に立たなくなった社会。そんな舞台設定だからこそ、人間の尊厳と矜持を保ち続ける主人公の姿が、よりクリアになっていく。
今回読んだのは、3部作の第1部と第2部。犯罪ミステリーでありながら、舞台設定はSFである本シリーズは、1部と2部で確実な死を予告されている人類と文明社会の崩壊の過程と、犯罪ミステリーとしての物語の分量は変わりつつあり、そのバランスも絶妙だ。本シリーズの最終作の発売が待ち遠しい。


初版2013/12・2014/11   早川書房/kindle版

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