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書評<黒い迷宮 ルーシー・ブラックマン事件15年目の真実>

2000年7月、六本木の外国人バーでホステスとして働く英国人女性が行方を絶った。謎めいた伝言、被害者が中流階級の白人女性という、日本では稀な事件は、被害者家族の来日や会見など、社会で大きく取り上げられた。捜索に長い時間がかかったが、犯人は逮捕され、有罪が確定している。事件発生当初から事件を追い、被害者家族とも深い関わりのあった在日本の英国人記者が、事件の全貌を明かす。

本書は殺人事件のルポルタージュとして、加害者の残酷さをことさらに強調するものでもなければ、被害者家族への憐憫を誘うものでもない。さらにいえば、警察の捜査のずさんさを告発するものでもない。それぞれの要素はもちろん含まれているが、本書のメインテーマはあくまで事件に関わった人物たちを掘り下げていくことにある。
特に印象に残るのは、被害者ルーシー・ブラックマンの父ティムだ。彼はマスコミに対し”悲しみにくれる父”というステレオタイプな対応をすることなく、ごく冷静に事件に対処する。見方によれば、事件の対応を楽しんでいるかのごとく。そして、自らもルーシーの失踪を探偵を雇って追う。そして彼は、もしかしたらルーシーの殺人事件よりも残酷な性倒錯の世界を覗いてしまうことになる。
また、英国人から見れば奇妙な六本木の夜の街と、警察の奇妙な対応もまた印象的だ。被害者が西欧先進国の白人女性だったからこそ日本の特殊性が浮き彫りになっていく。
被害者家族と同じ英国人記者だからこそ書けた事実に、まるで良質なフィクションを読むように引き込まれるルポルタージュだ。

初版2014/05  早川書房/kindle版

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