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書評<石油の帝国>

現代の社会における血液たる石油を採掘、流通させる石油関連企業は何かにつけて評判が悪い。大規模な原油流出事故で環境汚染を引き起こし、戦争となれば利権のために政府と動きをともにし、発展途上国から富を搾取する。1920年代の世界恐慌以後、合併に次ぐ合併を重ね、下手な国家などよりも大きな予算規模を持つ巨大企業となればなおさらだ。しかし、その実態は果たしてイメージどおりのものなのか?アメリカの巨大石油企業、エクソンモービルの歴史を、アラスカ沖原油流出事故以後から丹念に追い、その実態を暴き出す骨太なノンフィクション。

本書は、中心にエクソンモービルの2人の社長を据え、巨大石油企業がどんな方針のもとで動き、何を成し、何をしなかったか、丹念に追うことにより、一般的なイメージとは違う巨大企業の姿を描き出すことに成功している。
本書を読んで強烈に印象に残るのは、我々が考えるよりもずっと、エクソンモービルは純粋な営利企業であり、自らが定めたルールの下で動く企業であること。もちろんアメリカ議会でのロビー活動は活発に行うが、意外なことに政府の方針と会社の方針はズレが大きい。国益と、企業の利益は異なるのだ。エクソンが第一に考えるのは「埋蔵量リプレース」という、自社が抱える可能な石油採掘量を毎年維持させることにより、会社の価値を維持し、存続させることにある。
だからといって、油田確保のために発展途上国の支援はしても、賄賂をはらい、ときの政府とねんごろになるなどありえないことも、我々が抱くイメージと違うことの1つであろう。第2次大戦以後、中東諸国をはじめとして、資源ナショナリズムの高まりから、エクソンは大きな傷を負っており、過剰に現地政府に関わることはしない。ここでも求めるのは、従業員の安全と、利益の確保である。それがどのくらい徹底しているかといえば、石油の利益を独占しようとしたベネズエラのチャベス大統領から、巧みな銀行預金の操作で巨額の現金を奪い取ったことに象徴されている。
アメリカ、しいては世界を支配している帝国が重視するものを、偏見にとらわれることなく、見事に描き出したノンフィクションである。

初版2014/12 ダイヤモンド社/kindle版

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