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書評<ナチ科学者を獲得せよ! アメリカ極秘国家プロジェクト ペーパークリップ作戦>

1943年、ナチス・ドイツは戦争には敗北しつつあった。だが、ナチスは科学技術に関して、分野によっては連合軍より勝る資産を抱えていた。”報復兵器V2”はその代表格だ。アメリカ軍はドイツへの侵攻と同時に、それを確保しつつ動き出していた。なにせ東からはソ連軍がせまっているのだ。アメリカ軍が狙っていたのは”モノ”だけではない。むしろ、科学技術の発展を考えれば技術開発に携わる”ヒト”の方が重要だ。例えそれがユダヤ人絶滅をはかったナチ党の信奉者であっても。その技術者の確保・アメリカへの移住を促す作戦こそが”ペーパー・クリップ作戦”である。
本書はアメリカ軍のドイツ科学者確保作戦”ペーパー・クリップ”の全貌を明かすものであり、戦後アメリカの闇の一つに光を当てるものである。

例えばヴェルナー・フォン・ブラウン。アメリカの宇宙開発の父の一人であり、アポロ計画の立役者でもある。その彼も、戦時はナチ党に忠誠を誓い、奴隷ともいえる強制労働者を使ってロケット兵器V2の開発・生産を推し進めた。彼らはなぜ、戦時の罪を断罪されることなく、アメリカで学術生活を送ることが出来たのか。本書は近年開示された国防省の資料をもとに、それを追っていく。
本書でより重要なのは、罪を逃れた科学者よりも、ソ連の脅威に対抗するために、なりふりかまわずドイツ人科学者の確保に奔走したアメリカ軍の行動だろう。アメリカはそのための組織を立ち上げ、国務省や移民局の手続きをごまかし、ドイツ人科学者たちをアメリカに連れてくる。そのために、ニュルンベルク裁判の妨害まで行っているのだ。そこに倫理というものはわずかも存在しない。
著者の前作、<エリア51>では骨太のノンフィクションのはずが、最後の最後にファンタジーが入り込んでずっこけたが、本書は最後まで小粒とのノンフィクション、国家への告発書である。分厚く、人名が頻出してやや読みにくいが、価値のある本である。


初版2015/08 太田出版/ソフトカバー

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