書評<猟犬の國>
平和ボケの国といわれる日本でも、国内の防諜活動を専門とする組織がある。「何事もないのが一番いい。そのためならどんなこともする」を組織の存立基盤とする自称「イトウ家」だ。彼らは我々の生活に潜り込んだ”危険”を除去するために活動する。そんな組織に公安警察の新人、幸恵はスカウトされた。そしてペルー人のスパイを同行、新人教育を受けることになる。
著者の他のフィクションの中で、たびたび登場する「イトウ家」をメインにもってきた小説である。いくつかの短編で構成され、メインが「マージナル・オペレーション」にも登場する幸恵の新人時代の物語だ。新人だがつっかかるとこはつっかかる幸恵、冷酷なスパイを自称しながら、どこかロマンチストである先輩ペルー人。そのラブコメのようなやり取りの下には、犯罪や諜報、社会の不安定工作といった重いテーマが潜む。広がる著者の世界観の物語に今後も期待したい。
初版2015/08 角川書店/kindle版
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