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2015.10.15

書評<「ドイツ帝国」が世界を破滅させる 日本人への警告>

ここのところ、国際情勢を俯瞰すると、ドイツに注目が集まることが多くなっていることに気づく。通貨統合の崩壊の瀬戸際までせまったギリシャや南欧諸国の債務問題、不安定なウクライナ情勢への関与、シリアを中心とした難民問題など。これらはドイツの経済的支配力が大きくなったことに大きく関係する。フランス人の著名な人口論学者が、ドイツが世界で突出していく理由を明かしていく。

国家の人口分布などに注目し研究する「人口論」から、世界情勢を俯瞰する著者のインタビュー記事をまとめたもの。フランスの雑誌などの対談が中心なので「フランス人への警告」が本当のところだろうか?
それはともかく、ヨーロッパから遠い日本でも、ドイツが”目立つ国”になっていると感じるのは間違いないところだ。ユーロによる通貨統合とEUの東欧への拡大は、ドイツからEU諸国への輸出の拡大、ドイツへの安価な労働力の提供という結果をもたらし、本来は『強大なドイツを閉じ込める』のが目的のEU設立のはずが、強大なドイツの復活を促すことになっている。ギリシャはじめ他の加盟国は、国家債務のおかげで、ドイツの金融政策の為すがままであり、ドイツに対抗しうる国であるはずのフランスでさえ、エリート層はドイツにおもねるばかり。その先にあるものの心配を、著者は深刻に捉えているのだ。
ただ、著者が予測するほど現実はドイツにとって都合がよくないかも知れない。ドイツに押し寄せる難民の問題は、欧米が”民主化”のタテマエのもと、中東の秩序を瓦解させるのを援助した結果でもある。”優秀なドイツ製品”の代表格である自動車も、フォルクスワーゲンのディーゼルエンジン不正問題でブランドの価値を落としつつある。それでもドイツはドイツだ。EUとドイツの動向には今後も注意を払わなければならない。

初版2015/05 文藝春秋/kindle版

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