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2015.11.09

書評<反知性主義―アメリカが生んだ「熱病」の正体―>

最近、「反知性主義」を掲げた書籍やネット記事を多く見かける。多くは教養を積み重ねた知性よりも、感情を優先する近年の社会的傾向を批判するものだ。だが、アメリカで生まれた本来の反知性主義はまったく異なるものである。キリスト教と深く結びつき、権威に反抗する本来の反知性主義を、その歴史とともに解説する。

アメリカではいかにも知性を感じさせる政治家よりも、頭が抜群に良さそうにはみえないが、親しみを感じさせる政治家を大統領に選ぶ。ブッシュ(子)元大統領がそうだ。かように、アメリカではインテリへの嫌悪感がいまなお残る。そこには、アメリカに上陸して以来の、長いキリスト教のリバイバルの歴史があった。国教会の権威から逃れるためにアメリカに渡ったはずが、教育制度が整うに従って、いつの間にか植民地に根付いた地域の教会と牧師が権威となる。それに対抗するように、いくども本来の宗教の役割を果たそうとする、キリスト教のリバイバル運動が起こる。その積み重ねが、極端に大規模なチャーチ、連邦政府とそれを運営する知識層を嫌う大衆を生み出すのだ。反知性主義は本来、アメリカとプロテスタントの歴史そのものと深く結びついたものだ。本書を読めば、反知性主義なる言葉は日本で軽く使う言葉ではないことが理解できるだろう。

初版2015/02 新潮社/kindle版

2015.11.08

書評<戦場の掟>

イラク戦争はフセイン政権が倒れた後こそが、地獄の始まりだった。抵抗勢力や過激派による奇襲、IED(即製爆発物)による待ち伏せ、汚職にまみれた政府軍の裏切り。そこで注目されたのは、PMC(民間軍事会社)である。合衆国政府は正規軍による治安活動は限定し、輸送隊や政府要人の護衛など、多様な任務をPMCに”下請け”させた。
本書は小規模なPMCである「クレセント」に所属した、若い傭兵の物語である。イラク戦争で陸軍での実戦を経験した後、平時のアメリカでの生活に馴染めなかった彼は、PMCに誘われ、イラクの地に再び入る。質の悪い傭兵たちとの危険な任務。だが、その任務も破たんが訪れる。それは、彼の家族たちの戦いの始まりでもあった。
本書はイラク戦争でのPMCの実態を赤裸々に綴った、一人の傭兵の物語である。

イラク戦争は、大規模にPMCが導入された最初の戦争だった。高収入に多くの男たちがイラクに引き寄せられた。
問題はPMCの傭兵たちの素行と立場の中途半端さである。軍人ではないので、非人道的な行為を働いても、軍事裁判にかけられることもない。通常の軍隊なら入隊時に弾かれるであろう、素行の悪い人間たちが、高度な武装を保有するPMCはイラクで傍若無人に振る舞った。そこは当然、憎悪に満ち溢れた戦場となる。
本書はこうしたイラク戦争の全体的な状況に触れながら、一人の傭兵の物語に深く入り込む。いい加減としか言いようがない交戦規則、PMC経営本体のバックアップ。とても危険に見合うものではない。
さらに著者の父の死と、取材対象の死が重なり、傭兵たちの戦いのみならず、家族の戦いも主題の1つとなる。生死不明の状態に一縷の望みを託し、一喜一憂する家族。これも不正機戦争の知られざる一面だ。
本書はイラク戦争に参加したPMCを全体に俯瞰するものではなく、あくまで一人のPMC兵士の物語だ。だが、読むものに政府の戦争に対する欺瞞、過酷な任務の闇、PMCという、ロクデナシの集まりの実態など、多くの複雑な感情を抱かせる傑作である。

初版2015/09 早川書房/kindle版

2015.11.07

書評<代替医療の光と闇 ― 魔法を信じるかい?>

アメリカは先進医療の本場だが、同時に代替医療の話題にも事欠かない。古くは効きもしない丸薬の販売から始まり、現在ではサプリを開発・販売する業界が一部の政治家と組んで、医療業界に絶大な影響力を持つ。怪しげな薬品を規制するため、FDA(連邦医薬品局)が設立された後も、その規制をかいくぐる努力を”代替医療業界”は怠っていない。本書は主にアメリカの代替医療市場の歴史と実態を紹介する。

アメリカの代替医療の特徴は(アメリカに限らないが)、代替医療の開発者がマスコミに取り上げられることによって”マスコミの寵児”となり、それにハマったセレブが”広告塔”になる事例が多いことだ。代替医療による、ほんの一部の”奇跡”がマスコミに大々的に取り上げられ、高価で、副作用も伴う通常医療に代わる治療として注目される。セレブは藁をもすがる思いでその代替医療に飛びつくが、だいたいその結末は悲惨だ。
サプリもそうである。例えばコラーゲンを経口摂取しても、唾液と胃酸でアミノ酸で分解されるだけのことだ。それだけなら詐欺ですむが、一部の栄養補助食品は取り過ぎると逆に毒となる。本書は医療行為が本格化した19世紀末から、そうした事例を時系列に紹介し、また代替医療業界とFDAの暗闘も明かしていく。
本書で最終章に協調されるのは一部の”奇跡”を実際に起こすプラシーボ効果の重要性だ。人間の体と心は不思議なもので、”思い込み”が病気の回復につながる事例が実際にあるのだ。その”奇跡”のみを重要視して、助かったはずの命が失われた事例には事欠かない。一方で、代替医療の実践者たちは、奇跡を求める患者とその家族につけこみ、今日も大金を稼ぐ。
サプリなんざ飲むのもアホらしい、そんな気持ちでいっぱいになるノンフィクションだ。

初版2015/09 地人書館/ハードカバー

2015.11.01

Su-24MR Day1st

シリアの内戦にロシア空軍が介入という、尋常でない世界情勢の今日この頃。シリアに派遣されている戦闘爆撃機のうち、Su-24フェンサーの1/72新キットが発売されました。
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生産国である中国の人件費高騰か為替のせいか、¥8,000近くするキットですが、VG翼スキーとしては買わないわけにはいかないでしょう。さらに今現在、実戦参加している”旬の機体”を作らないわけにはいかないでしょう。キットは偵察型ですが。
パーツを台所用洗剤で水攻めにした後、早速組み立て開始。
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コクピットとエアインティークを先に塗装して機体を組み立て。パチピタとはいきませんが、仮組みしながら、瞬着と流し込み接着剤を使い分けていけば、サンディングは最小限で済むはず。中華製キットの特徴である、くどいリベットのモールドを復活させる作業はメンドクさいので、なるべくモールドを消さない方向で接着。
それと、プラが国産に比べると柔らかいので、パーツが破損しやすい。なので、なるべくカッターを使わず、サンドペーパーでゲート処理しています。
胴体は機首部と胴体が分割されていますが、機首部分を先に組み立て、それを胴体の上下パーツで挟み込むので、強度的には問題ないかと。オモリを入れる指示は説明書にありませんが、そこはかとなく尻もちしそうなので、ガン玉を機首に詰め込んでます。
箱にはランナーがいっぱい詰まってますが、半分ぐらいは使わないミサイルや爆弾なので、思ってたより早く仕上げられるかも。ストレートでサクサクいきましょう。

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