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2016.01.03

書評<世界の終わりの七日間>

地球へ小惑星が激突することが判明し、社会が崩壊しつつある中で、自分の正義を貫く刑事の姿を描くミステリー、第3弾にして最終回。
前作で主人公は警官仲間たちが最期の時を過ごすカントリーハウスに身を寄せたが、行方不明となった妹の捜索に出かける。そこで出会う、異常な状況、奇妙な人たち。小惑星衝突が迫る中で、主人公は矜持を保ち続けることができるか?

警察組織も既になくなり、事実上社会が崩壊している世界。以前の世界の価値観を保ったまま、捜査を続ける元刑事の方が、狂気に満ちているのではないかと疑いたくなるような状況。そこでも結局、犯罪は犯罪であり、悪人は悪人であることを、見事に描き出した作品だ。今作では、異常な状況の中で、守らなければならない家族を抱える人間の困難もまた印象的だ。パニック小説と、犯罪捜査ミステリーの奇妙な融合に成功している、そんな小説である。

初版2015/12 早川書房/ハヤカワミステリ

2016.01.02

書評<アトランティスへの旅 -失われた大陸を求めて->

オカルト研究の分野で、もっともメジャーなものの一つが「アトランティス大陸」である。紀元前に高度な文明を築き、大陸ごと天変地異により消え去ったアトランティス大陸とその文明。元々はプラトンの哲学書の記述からその存在の探求が始まったが、「プラトンがアトランティスを比喩に使った」というのが定説だ。だが、一流の科学者までが、アトランティスの存在を真実として研究し、その発掘を行っている。アトランティスはなぜ、そこまで人を引きつけるのか?著者は研究者たちに会い、インタビューを通してアトランティスの真実を明かしていく。

本書は様々なアトランティス研究者の素顔を明らかにし、彼らの研究成果を取材する。ワタシのアトランティスの知識は20年前から止まっているが、世界では衛星写真から古代文明の所在地を突き止め、その場所の発掘を通して、ほぼ”真実(だが現代文明を超越するものではない)”であろう古代文明の所在にたどり着いているのである。だが、もちろんイロモノ(プラトンが新大陸の文明の存在を知っていた)の説も消え去ることもなく、生き残っているのがアトランティス研究の特徴の1つだ。とにかく、裾野が広いのである。
哲学、地学、歴史学、海洋学など、幅広い英知をアトランティス研究は必要としている。その研究の魅力を著者は余すことなく伝えることに成功している。それを壮大な酔狂と思うか?人生を面白がれるか?自分の立ち位置を問われるノンフィクションである。

初版2015/11 青土社/ハードカバー

2016.01.01

書評<営業バンが高速道路をぶっ飛ばせる理由>

サスペンションの神様の異名をとるエンジニア國政久郎氏と、モータージャーナリスト森慶太氏の問答で、乗用車の操安性、すなわち直進性やカーブでの挙動を説明していくのが本書である。クルマのサスペンションの挙動は様々な物理特性が絡み、非常に数学的な分野だが、本書ではシロウトにも理解しやすいように解説する。

近年はハードとしての車の進化は進み、”真っすぐ走る””運転者の思い通りに走る”くらいのことは、よほど特殊なクルマでない限り誰にでも出来そうな感じがする。ところが、発売されたての新車においても、どうにも運転しにくいクルマがある。妙にステアリングが敏感で、高速を流すのにも疲労する。そのような状況の理由を本書は明かしていく。
例えば表題の営業バン。ワタシ自身も営業車乗りだが、スペック上は中級セダンに劣るのに140㎞くらいはへっちゃらだ。そこには貨物車ゆえのボディの堅牢さ、実用性優先のタイヤ、遮音材が薄いゆえによく分かる走ってるクルマの状況など、アクセルを踏める要因があるのだ。スペックや内外装に惑わされないクルマ選びのための参考書の1つになるだろう。


初版2015/09 三栄書房/ソフトカバー

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