書評<世界の終わりの七日間>
地球へ小惑星が激突することが判明し、社会が崩壊しつつある中で、自分の正義を貫く刑事の姿を描くミステリー、第3弾にして最終回。
前作で主人公は警官仲間たちが最期の時を過ごすカントリーハウスに身を寄せたが、行方不明となった妹の捜索に出かける。そこで出会う、異常な状況、奇妙な人たち。小惑星衝突が迫る中で、主人公は矜持を保ち続けることができるか?
警察組織も既になくなり、事実上社会が崩壊している世界。以前の世界の価値観を保ったまま、捜査を続ける元刑事の方が、狂気に満ちているのではないかと疑いたくなるような状況。そこでも結局、犯罪は犯罪であり、悪人は悪人であることを、見事に描き出した作品だ。今作では、異常な状況の中で、守らなければならない家族を抱える人間の困難もまた印象的だ。パニック小説と、犯罪捜査ミステリーの奇妙な融合に成功している、そんな小説である。
初版2015/12 早川書房/ハヤカワミステリ
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