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書評<NORAD 北米航空宇宙防衛司令部>

北米航空宇宙防衛司令部、通称NORADはカナダとアメリカが北米大陸へのソ連の航空攻撃を探知・迎撃するために設置された組織であり、一般にはシャイアン・マウンテンと呼ばれる核攻撃に備えた巨大地下施設が有名である。冷戦の最盛期からソ連崩壊、そしてテロの時代になり、NORADも変化している。本書はNORADを軸にすえ、北米大陸の防空体制が時代によりどのように変化していったかを辿るものである。

本書はNORADに配備されたハードやソフトといった軍事資産の解説書ではなく、あくまでカナダ側から見た防空の戦後史を辿るものである。そこに期待すると、肩透かしをくらう。
だが、カナダの国防と外交史として、学ぶところの多い解説書である。、ソ連の攻撃に備えてアメリカが全面的な主導権をとってNORADを運用していたイメージを自分も持っていたが、いうまでもなくカナダも主権国家である。アメリカに飲み込まれないように独自主張しながら、自国の防空のためにNORADを維持、改編していく歴史は、想像するよりも紆余曲折あったようだ。カナダ独自の国防政策として、要撃戦闘機を開発しようとして失敗したり、フランス系とイギリス系の国民に二分されるカナダの国内事情に防衛政策が左右されたりして、カナダも決して平穏無事な国ではなかったのだ。
基本的にはアメリカとNATOの下になるカナダ国防軍は、各地の紛争に武力を提供しながら、ドラマチックに変化する軍でもある。戦車を全廃しようとしたがアフガンでの教訓により最新のレオパルド2改を導入したり、原潜を保有しようとして失敗したり。そこらへんのハードの変化も踏まえて読むと、なかなかに興味深い外交史である。


初版2015/12 中央公論新社/ハードカバー

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