書評<PK ~最も簡単なはずのゴールはなぜ決まらないのか?>
サッカーにおいて、PKは運に左右されるものであり、その必要性を疑う意見も多数ある。一方で、PKはサッカーの歴史に多くのドラマを与えてきた。ペナルティーエリア内でのファールに与えられるPK、試合の決着をつけるPK、いずれにしてもキッカー側が有利に見える。ましてプロのフォワードなら。しかしながら、優秀なGKのプレーはそれを覆す。それが人の心を震わせるのだ。本書はPKという、サッカーの中でも特別なプレーをとことん解説するものである。全盛になりつつある映像データによるプレー分析は、キッカーとGKのどちらに有利に働くのか?PKがうまいキッカー、PKストップがうまいGKの特徴はどんなものかといったプレイヤーの分析から、PKを巡るメジャー選手のエピソードといったものを取り混ぜ、PKを存分に分析し、語っていく。
PKはメンタルが強くて、テクニックがあるキッカーなら100%決まるものでもないし、逆にGKがいくら常識外の反射神経の持ち主であり、正確なテクニックの持ち主でも100%止められるものでもない。また、ある程度まではデータ分析でキッカー、GKの傾向が読み取れるが、それが絶対ではないことは、歴史が証明している。だからこそ、PKはプレイヤーと観客の心拍数と血圧を上げるプレーであり続けるのだ。本書のPKを巡る分析と、PKを巡る物語を読むと、改めてそう思う。本書に登場するデータアナリストのPK合戦の分析に舌を巻くし、プロのプレイヤーたちの細かい駆け引きに驚嘆する。本書を読めば、PK合戦をよりテクニカルに分析しながら観戦することが出来るし、よりプレイヤーに感情移入できるだろう。
本書はテクニカルな分析書でもあり、PKを巡るドラマを楽しむ書でもあり、サッカーを見る目が広がる本だ。
初版2015/12 カンゼン/ハードカバー
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