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書評<あの日>

STAP細胞と名付けられた万能細胞の発見と、若き割烹着姿の女性研究者のアンバランス。小保方晴子女史は、あっという間にマスコミの寵児に持ち上げられた。だが、ちやほやされる時間は短かった。主にネットからSTAP細胞の存在に疑義が出され、その後、論文の図表の挿し間違い(と本人は主張)やずさんな実験ノートの存在など、小保方晴子女史とその所属研究所である理研の評判は地に落ち、小保方氏は別の意味でマスコミに追い回される立場となる。
その間、彼女は何を考え、どのように事態に対応してきたのか?マスコミやこれまでの検証記事に書かれていない真実とは何か?本人の手記により明らかにされる。

STAP細胞にまつわる手記というよりも、小保方氏のこれまでの半生をまとめた手記である。生命科学にまつわる専門用語と、ファンタジックな比喩表現が入り混じる文章は、少なくとも編集の手が大幅に入った文章だが、凄まじい怨念は充分に伝わってくる。「私は不正などしていない。やったのは共同研究者の若山だ!私は担ぎ上げられて、ハシゴを外されただけ」「メディアスクラムと理研の情報リークが私を悪役に仕立て上げた」「NHKと毎日新聞の記者は絶対許さない」などなど。特に山梨大学の若山教授への恨みはハンパない。もちろん、申し訳程度に「私も至らないところが多くあった」と書いてはある。だが、基本的にすべては「他人のせい」なのである。
小保方氏の「私って優秀でしょ」という人生順風満帆な前半部分と、STAP細胞の存在に疑義がかけられてからの後半の疾走感の対比が凄まじく、読むのを止められなかった。少なくともオレは。感情の奔流に打ちのめされる。
何よりもスゴイのは、この期に及んでも「STAP現象はあった」と主張し、反省はしていないのだ。本人は心神耗弱で再現実験も事情聴取もまともに対応できなかったと書いてるが、実はメンタルが強いとしか思えない。

ここに至っては、前記した若山先生にも手記を執筆していただき、泥仕合を繰り広げてほしい。ゲスなオレの心がそう叫ぶ一冊である。

初版2016/01 講談社/kindle版

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