書評<ガンルージュ>
北関東の寂れた温泉街。そこにある別荘で、韓国の大物政治家が拉致される事件が起こる。不幸なことに、地元の少年少女2人が巻き込まれた。警視庁の元特殊部員である少年の母親、律子は拉致の事件背景を知り、自らの手で息子を救出することを決意する。相棒は少々型破りな女性体育教師、美晴。韓国の特殊部隊を相手に、2人は少年たちを助けられるか?
著者の他の作品同様、主人公たちの派手な戦いとともに、事件の背景に警察の暗部と官僚の駆け引きが繰り広げられるアクション・ノベル。本作は官僚の暗闘は抑えめで、シロウトの女性が韓国の特殊部隊員相手に大立ち回りを演じ、読む側もストレスの解消してくれる痛快な物語である。そして、美晴にとっては、いまいちだったここ数年のスランプから脱出する成長物語でもある。
一方で、もう一人の主人公の律子は、警察の権力争いの証拠を隠し持ち、過去とともに一人息子と生きることを決意する。対照的な2人の結末まで、ノンストップで読める快作である
ところで、美晴の抱える過去がまるで「新宿鮫」のヒロインと一緒で、おそらく分かってやってると思われる。とすると、かの大物作家へのオマージュ的な作品でもあるのだ。
初版2016/02 文藝春秋/kindle版
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