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書評<「反戦・脱原発リベラル」はなぜ敗北するのか>

東日本大震災とそれに伴う福島第一原発の事故により脱原発の機運が高まり、そこにあらたな安全保障法制の制定検討が加わったことで、にわかにリベラルの反戦・脱原発の勢力が立ち上がってきた。主催者発表で万単位の国会前デモに代表されるその運動は、マスコミにも当然注目される。
しかしながら、その運動は成果を上げられていない。原発は稼働し、安全保障法制は改定された。リベラルの運動が一般市民に影響を与えたなら、内閣支持率は落ち込み、国政選挙にも影響するはずだが、彼らが忌み嫌う安部政権と自民党の政治体制はまったく揺るがない。リベラルはなぜ、政治に影響を与えられないのか?それを探っていく。


朝日新聞はじめとするマスコミや、リベラルな”文化人”たちが大々的に取り上げられ、「これが民主主義だ!」と持ち上げられるわりには、選挙になんの影響も与えられないどころか、結果的に与党の援護射撃となってしまうリベラル勢。反マスコミ勢に勢いがあるネット上でも、その原因が様々に語られているが、本書はそれを体系的にまとめ、歴史的・思想的な分析を加えたものといえる。
それは日本のリベラルがまったく「現実社会に生きていない」ことに尽きると個人的には思う。世界にテロが溢れ、隣国の大国は我が物顔で近隣諸国を圧迫する。そこで「集団的自衛権反対!」などと声を上げても、まったくもって響かない。「アメリカの戦争に巻き込まれる」というは、現在の中東はアメリカさえ正規の陸軍派遣を嫌がる状況だ。現状分析のうえでの思想ではなく、観念論に終始している。
反原発もそうだ。「事故が起こったらどうする」「経済より生命優先」とリベラルは問うが、実際には経済的困難が自殺発生率を上げる。残念ながら、世界に絶対安全などなく、リスクとベネフィットを天秤にかけるしかないのだ。
彼らが観念的世界を生きている証拠は、彼らが大好きなデモに端的に表れる。少数の学生たちと、多数の老人たち。明日の収入を気にしなければならない人は、デモの中にはいない。いかに高齢化社会といえど、生産人口に働きかけのない社会運動など、政府の方針に影響を与えられないだろう。
本来ならこうした自己分析をしなければならないのはリベラルのはずなのだが、それをしないのでリベラルは敗北する。本書はそう一刀両断する。その先にあるのはインナーサークル化と身内の喧嘩と分裂だ。まさに歴史は繰り返す。

初版2016/02 筑摩書房/ちくま新書

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