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書評<大絶滅時代とパンゲア超大陸: 絶滅と進化の8000万年>

地球の生物は、その誕生から5度の大絶滅を経験してきた。なかでも有名なのは小惑星激突による恐竜の絶滅だが、規模としてはその前の絶滅の方がもっと大きい。本書では5度の絶滅のうち、恐竜絶滅前の2つを取り扱う。それは世界の大陸がパンゲア大陸として、1つだった時代だ。2億年前、全生物の90%が死滅した時、どのようなことが地球に起こっていたのか、地学的な視点から解説していく。

本書で扱う大絶滅のキーワードになるのは「巨大火成岩岩石区(LIPs)」と呼ばれる地層だ。その名のごとく、現在では考えられないほどの巨大な火山の噴火と、吹き出すマグマによって形成された岩石である。その火山爆発こそが大気や海洋の組成を大きく変化させ、生物に大ダメージを与えたとの仮説を提唱する。
著者は地層や岩石に蓄積された地球環境の変化を調べ、生物の苦難の歴史にそれがどう繋がったかを調べ、その仮説を証明していく。いってみれば地道な作業であるが、パンゲア大陸時代のダイナミックな地球の動きを想像すると、人類が生きてる今現在は「ほんのつかの間の休憩」に思えてくる。想像力をかきたてられる本だ。


初版2016/02 原書房/ハードカバー

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書評<スーパーカー誕生>

車体の中央、すなわちミッドシップにエンジンを積んで運動性を高め、ノーズを低くして空力特性を良好にし、人の目を魅くスタイリングを実現する。それがスーパーカーである。ある種の人々を魅きつけてやまないスーパーカーたちは、どのように開発されてきたのか?徹底したエンジニアリング的視点と、開発担当者たちのインタビューにより、「スーパーカー伝説」を解き明かしていく。

著者はメーカーの宣伝資料に頼らず、常にエンジニアリング的視点で車を捉え、表面的な批評を避ける、日本では数少ない自動車評論家の一人である。ゆえに、著者が解説するランボルギーニやフェラーリの解説はたいへんな説得力を持つ。
もちろん、機械的な解説だけではない。自動車産業は世界経済に大きな影響を与える産業なので、そこには経営者たちの思惑、世界の経済情勢、国家の栄枯盛衰が複雑に絡み合う。1モデルが年数百台しか生産されないスーパーカーにも、その影響はもちろん及ぶ。それがスーパーカーのエンジンに、シャシーに、ギアに如実に現れるのだ。著者は前述したエンジニアリング的視点に、時代の移り変わりを上乗せし、本書を見事なノンフィクションに仕上げている。クルマ好きは必読だ。

初版2015/11 文藝春秋/文春文庫

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書評<米軍基地がやってきたこと>

第2次大戦の終戦後、アメリカ軍は世界各地での軍事的プレゼンスを維持するため、占領した敵国や支援した連合国に恒久的基地を建設し、駐留をはじめた。ここでいう基地とは、軍人たちの家族が住む住宅を含めた各種施設を含めるため、駐留地域に多大な経済的・政治的影響を及ぼす。地政学的な地理的条件にあった小さな島の住民たちを追い出し、土地を確保するためにマフィアと結びつき、基地に依存した経済状態を地域に作り出す。西側世界に安定をもたらすため、共産圏への抑止力を確保するために世界中に駐留するアメリカ軍基地は、地域に何をもたらしているのか。その実態を明かしていく。

本書はアメリカ人から見た”海外駐留基地のリアル”をまとめたものである。アメリカ軍がどのように基地を確保し、基地がある地域で何が起こったかを詳細にリポートしている。ディエゴ・ガルシアやグアム島のような離島から、イタリア、ドイツ、そして沖縄にある大型施設まで、扱う範囲は幅広い。「住民を追い出した」「性犯罪」とかいったような感情に訴えるような章ももちろんあるが、国防相の予算の中で海外駐留費がいくら掛かっているかを調査し、いかに莫大な費用が費やされているかを明かしていく。著者としての結論は、「アメリカにも駐留される国にも負担になる海外駐留基地は閉鎖すべき」である、とする。「海外駐留に使う経費でメディケアを」という、リベラル派にありがちな結論だ。
ただ、公平にみると本書は”世界情勢のリアル”の方には触れていない。アメリカの軍事的プレゼンスが弱まったとたんに紛争が溢れだした地域は数知れず。太平洋は中国の拡大主義にさらされ、フィリピンはじめ環太平洋の国々は、少なくともアメリカ太平洋軍の全面撤退は望んでいないだろう。
日本もそうだ。沖縄駐留部隊と、第7艦隊がされば、地域の軍事バランスは崩れる。そのとき、隣の大国はどう出るか。国家の独立を守るためのギリギリの判断をしている国、地域も少なくないことを忘れてはならないだろう。

初版2016/03 原書房/ハードカバー

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