書評<スーパーカー誕生>
車体の中央、すなわちミッドシップにエンジンを積んで運動性を高め、ノーズを低くして空力特性を良好にし、人の目を魅くスタイリングを実現する。それがスーパーカーである。ある種の人々を魅きつけてやまないスーパーカーたちは、どのように開発されてきたのか?徹底したエンジニアリング的視点と、開発担当者たちのインタビューにより、「スーパーカー伝説」を解き明かしていく。
著者はメーカーの宣伝資料に頼らず、常にエンジニアリング的視点で車を捉え、表面的な批評を避ける、日本では数少ない自動車評論家の一人である。ゆえに、著者が解説するランボルギーニやフェラーリの解説はたいへんな説得力を持つ。
もちろん、機械的な解説だけではない。自動車産業は世界経済に大きな影響を与える産業なので、そこには経営者たちの思惑、世界の経済情勢、国家の栄枯盛衰が複雑に絡み合う。1モデルが年数百台しか生産されないスーパーカーにも、その影響はもちろん及ぶ。それがスーパーカーのエンジンに、シャシーに、ギアに如実に現れるのだ。著者は前述したエンジニアリング的視点に、時代の移り変わりを上乗せし、本書を見事なノンフィクションに仕上げている。クルマ好きは必読だ。
初版2015/11 文藝春秋/文春文庫
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