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書評<米軍基地がやってきたこと>

第2次大戦の終戦後、アメリカ軍は世界各地での軍事的プレゼンスを維持するため、占領した敵国や支援した連合国に恒久的基地を建設し、駐留をはじめた。ここでいう基地とは、軍人たちの家族が住む住宅を含めた各種施設を含めるため、駐留地域に多大な経済的・政治的影響を及ぼす。地政学的な地理的条件にあった小さな島の住民たちを追い出し、土地を確保するためにマフィアと結びつき、基地に依存した経済状態を地域に作り出す。西側世界に安定をもたらすため、共産圏への抑止力を確保するために世界中に駐留するアメリカ軍基地は、地域に何をもたらしているのか。その実態を明かしていく。

本書はアメリカ人から見た”海外駐留基地のリアル”をまとめたものである。アメリカ軍がどのように基地を確保し、基地がある地域で何が起こったかを詳細にリポートしている。ディエゴ・ガルシアやグアム島のような離島から、イタリア、ドイツ、そして沖縄にある大型施設まで、扱う範囲は幅広い。「住民を追い出した」「性犯罪」とかいったような感情に訴えるような章ももちろんあるが、国防相の予算の中で海外駐留費がいくら掛かっているかを調査し、いかに莫大な費用が費やされているかを明かしていく。著者としての結論は、「アメリカにも駐留される国にも負担になる海外駐留基地は閉鎖すべき」である、とする。「海外駐留に使う経費でメディケアを」という、リベラル派にありがちな結論だ。
ただ、公平にみると本書は”世界情勢のリアル”の方には触れていない。アメリカの軍事的プレゼンスが弱まったとたんに紛争が溢れだした地域は数知れず。太平洋は中国の拡大主義にさらされ、フィリピンはじめ環太平洋の国々は、少なくともアメリカ太平洋軍の全面撤退は望んでいないだろう。
日本もそうだ。沖縄駐留部隊と、第7艦隊がされば、地域の軍事バランスは崩れる。そのとき、隣の大国はどう出るか。国家の独立を守るためのギリギリの判断をしている国、地域も少なくないことを忘れてはならないだろう。

初版2016/03 原書房/ハードカバー

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