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書評<ハンター・キラー アメリカ空軍・遠隔操縦航空機パイロットの証言>

大規模な正規軍がぶつかる戦争が遠のき、新たな攻撃機、戦闘機の開発が停滞する昨今、アメリカはじめとする各国空軍で大きな存在になりつつあるのが無人機の世界である。民間でもドローンと呼ばれる無人機は、当初の偵察・監視任務から、テロリストへの直接攻撃まで任務とするようになっている。本書はアメリカ空軍の主力無人機であるプレデター、その発展型であるリーパーの部隊創設から間もない時期からUAVに関わってきた著者が、アフガン、イラク戦争の実戦、対テロリスト作戦に関し、無人機運用の実際を明かしていく。

本書は無人機運用の現場として象徴的な、アメリカ本国に存在する遠隔操縦施設、実際に無人機を離陸・着陸させるアフガン、ジブチなどの海外展開地など、”現場”を知る著者の回顧録であり、貴重な証言である。本書を読んでまず感じるのは、無人機運用のフロントラインにいる軍人たちの意識の高さだ。空軍ではドローン、UAVといった一般的な用語を使わずRPA(Remotely Piloted aircraft)、RPAコミュニティといった用語を使う。自律飛行は飛行過程の一部であり、無人機はあくまで”操縦が必要な航空機”で、パイロットは空中にいなくてもパイロットというわけだ。また、発展途上の兵器であり、全面的に軍幹部の信用を得ているわけではないので、1つの失敗がRPAコミュニティ全体の信用低下につながる。そうした事態を避けるためには、長く退屈な監視任務から、劇的な”要人暗殺”まで、常に集中を続けなければならない。また、その任務の性格上、常にホワイトハウスを頂点とする上部組織に干渉される。精神的にも、肉体的にもストレスがたまる職場なのだ。
無人機の運用は非常にセンシティブで、”無人機の時代”が簡単におとずれるとは思わない。現場の一部を垣間見た正直な感想である。

初版2015/12 角川書店/Kindle版

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