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書評<クロニスタ 戦争人類学者>

人類が個々人の認知や感情を共有する“自己相"が普及した社会。社会的規範や価値観も共有することにより、いわば人類の脳を”1つの個”としてまとめ、紛争をなくすことを目指し、人類は可塑神経網作成ナノマシンを脳内に構築した。
だがそれは、自己相での管理を嫌う民族や個人との軋轢を生みだした。共和制アメリカは彼らを”難民”と称し、強引な自己相構築を進めていた。その際に、自己相を各民族に合わせて調整するのが”戦争人類学者”、クロニスタである。クロニスタである主人公は、その自己相普及の過程で明らかに従来の人類とは違う、金髪の少女に出会う。それをきっかけに、主人公は自己相が持つ危険性に近づいていく。

人類がテクノロジーにより、1つの個に近づいていく。だがその過程で、個々人の個性や感情を「共有していく」ことの危険さに気づく...数多くのSFで繰り返されてきたモチーフだ。本作は「テクノロジーを共有する人とそうでない人の軋轢」から「テクノロジーそのものの危険性」へ近づいていく物語であり、ストーリーが進むにつれて親友やヒロインとの関係までが崩れていく様は、いくたのSFに負けぬスリルがある。同時に、繰り返されるモチーフ故、ちょっと先が読めてしまうのも残念。著者はポスト伊藤計劃の筆頭らしいが、本作は人類に対してドライにいくかウェットにいくか、いまいちハンパな立ち位置だと思う。しかしながら、SF分野の見事なストーリーテラーであることは確かだ。次作に期待する。

初版2016/03 早川書房/ハヤカワ文庫JA

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