書評<毒々生物の奇妙な進化>
世界には哺乳類、爬虫類、水棲生物、昆虫問わず、多くの毒を持つ生物がいる。人間をも瞬時に死に至らしめる毒を持つ生物も多く、そのことが逆に多くの生物学者を引きつけている。本書は数少ない毒を持つ哺乳類であるカモノハシをはじめ、多くの毒の持つ生物を取り上げ、奇妙とも必然ともいえる進化の謎にせまっていく。
我々はヘビあるいはフグなど多くの毒を持った生物を知っているが、意外とその毒が具体的に何に作用し、激痛や死をもたらすのか、意外と理解していない。本書は著者の多くの体験を通して、それら毒を持つ生物の実態にせまっている。
生物の毒とは、主に神経毒と血液毒に分かれる。とはいえ、多くの生物が他者に”射ち込む”のはそのカクテルだ。それゆえ解毒はやっかいである。それら恐ろしい生物は、逆にいえば体内で毒を生成するため、多くのエネルギーを使っている。果たして、それは生きていくうえで収支があっているのか?あまりシロウトが思いつくことのない視点で、毒をもつ生物を解説する。
また、定説を覆すエピソードもある。コモドオオトカゲは、今でもテレビなどでは「口の中の雑菌が咬まれた生物を腐敗させる」と解説されることもあるが、実際にはオオトカゲは毒腺を持っているのだ。
一方で、まだ生物の毒には分からないことも多い。それゆえ、研究は続いているし、謎を解けば「毒と薬は紙一重」という言葉にもあるとおり、人類を救う薬の原料となることもあるのである。生物の謎の1つを探りたい方におススメだ。
初版2016/02 文芸春秋/ハードカバー
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