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2017.07.01

書評<増補新版 イスラーム世界の論じ方>

日本における数少ない中東およびイスラム教の識者、池内恵氏による、評論集。主にイラク戦争前後、2003年~2006年までの期間、自衛隊のサマワ派遣から日本人人質事件など、イスラム世界と日本が急速に関わりを深くした時期に、新聞やオピニオン誌に掲載されたものをまとめたものである。

日本の報道番組に出演する中東、アラブの専門家と呼ばれる人は、過剰に”アラブの代弁者”であることが多い。例えば、中東世界の混乱のすべてを「サイコス=ピコ協定」に始まる欧米の横柄な外交と武力介入に原因を求める態度をとる専門家に対して、本書の著者池内恵氏は過剰にアラブ側に寄ることなく、冷静にイスラムの世界を解説する。著者はコーランとイスラムを最優先とするイスラム世界の行動原理を説き、日本の戦後の主流の価値観(西欧的なキリスト教に根差す倫理観)とは決して相容れないことを指摘する。「信教の自由」一つとっても、イスラム教と他の宗教は平等に並んでいるわけではなく、イスラム教がまずありきであるアラブ世界のルールを、本書では幾度も指摘する。世俗主義の我々の世界とは違う世界があることを、まずもって理解しなければならない。
中東とイスラム世界がトラブルメーカーであることは否定できない昨今、氏の分析をもっと読みたいものだ。


初版/2016/05 中央公論新社/ハードカバー

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