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書評<ゲームの王国>

1970年代前半、王政が倒れ、不正選挙による民主化が失敗して不安定な独裁が続くカンボジア。本作の主役は、農村に生まれながらも、天賦の知性を持つムンタックと、ポル・ポトの隠し子であり、流転の幼少期を過ごす少女ソリア。二人は奇しくも、クメールルージュの革命が成った日に出会った。そして2人は暗黒の時代を彼らなりに生き抜こうとする。そしてそれは、彼彼女が壮年になった時代まで続く物語の始まりであった。

「“伊藤計劃以後"という時代は本作の刊行によって幕を閉じる。」このコピーに見事に引っかかって、上下ハードカバーの本書を購入。前半はカンボジアの貧しい農村と天才少年の成長と、秘密警察から逃げ続ける聡明な少女の成長を描き、決定的な衝突までを描く。後半はときを2030年まで移し、ソリアが正しいことを為すために政権を獲る直前が描かれ、そこで脳の活動を操るゲームが登場し、物語がSFっぽくなる。
非科学的な迷信に支配された農村の、それでいて平和な生活と、クメールルージュ革命の恐怖が少年の目線で描かれる前半は非常に瑞々しく新鮮だ。どこか遠い世界の革命が音を立てて近づいていく様子は回想録を読むようである。それに対比して、後半は脳科学と政治のストーリーとなり、虐殺を生き抜いてきた男女の哀しいすれ違いが描かれ、ミステリーの要素が多くなる。様々な面を見せながら、物語は終焉に向かう。
一見散漫な登場人物と技術要素がカッチリ噛み合う物語の組み立ては見事であり、”ゲーム”という言葉に何重の意味を持たせた主題の追及も非凡さを感じさせる。最新のテクノロジーが登場しながら、バラ色の未来があるわけでもなく、現代という平原が続く様も、極端なカタルシスがないと分かりつつある”今”に相応しい物語だ。個人的には、次作はもう少しSF要素が強い物語を期待する。


初版2017/08 早川書房/ハードカバー

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