書評<エロマンガ表現史>
マンガの歴史は長く、それなりの評論もあるが、エロマンガはそのジャンルの特殊性から、なかなか批評的な文章に出会うことは難しい。本書はそのエロマンガの表現の歴史の解読に挑んだものである。「触手」「乳首残像」「くぱぁ」といったエポックメイキングな表現は誰が生み出し、継承され、マンガ読みに共通認識される"記号”となったか。サブカルだからといって茶化すことなく、あくまでアカデミックに分析する。
エロマンガが劇画と呼ばれるものから派生して50年弱。絵柄だけではなく、マンガとして進化してきた。エロという特殊性から規制もあるが、逆にそれが表現の進化を生み出したともいえる。
本書は前記したエロマンガの代表的な共通記号を歴史を分析する。いまやメジャーになった大作家のインタビュー、また海外に活躍の場を広げた作家へのインタビューも含めて、ある意味貴重な資料集となっている。
この批評書いてるワタシは45歳だが、まさにエロマンガの進化のど真ん中を生きてきたことを感じさせる一冊でもある。ソフト表現の「ホットミルク」、暴力表現に衝撃を受けた前田先生に代表される異種姦マンガ、「みさくら語」の数々。我々は何を「エロい」としてきたのか、貴重な歴史書だ。
初版2017/11 太田出版/ソフトカバー
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