書評<星屑から生まれた世界 進化と元素をめぐる生命38億年史>
かつて進化生物学者のスティーブン・グールドは著書「ワンダフル・ライフ」で「断続平衝説」を唱えた。生物の進化は一定方向にあるのではなく、偶然に支配されており、生物進化のテープを巻き戻しても同じ進化が起こる可能性は非常に低い、と。しかしながら、元素とその周期表から生物を捉えると、それが覆ることが分かってきた。元素とのその科学からみた、生物進化の物語が本書である。
元素の化学反応は常に一定方向に進む。それは化学のセントラルドグマの1つである。ビッグバンによりこの宇宙が生まれ、飛び散った元素が一定量ならば、宇宙と恒星・惑星の成り立ち、生物の進化さえも一定方向にあるはずだと本書の著者は主張し、解説していく。地球が形作られる反応の順位から、たんぱく質の反応順位さえも予測出来るはずなのだ。
本書の説は、生物学からみた進化と生体内の化学反応しか知らない自分のようなシロウト科学好きにとっては新鮮だ。近年の分子生物学にも一致する。しかしながらSF的なマインドやロマンは減るだろう。炭素原子が渡す腕の数が生物を生んだのなら、他の元素を中心にした生態系は成り立たないのだ。「星屑から~」とロマン溢れる題名だが、それがちょっと減る一冊である。
初版2017/12 化学同人/ソフトカバー
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