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2018.01.19

書評<星屑から生まれた世界 進化と元素をめぐる生命38億年史>

かつて進化生物学者のスティーブン・グールドは著書「ワンダフル・ライフ」で「断続平衝説」を唱えた。生物の進化は一定方向にあるのではなく、偶然に支配されており、生物進化のテープを巻き戻しても同じ進化が起こる可能性は非常に低い、と。しかしながら、元素とその周期表から生物を捉えると、それが覆ることが分かってきた。元素とのその科学からみた、生物進化の物語が本書である。

元素の化学反応は常に一定方向に進む。それは化学のセントラルドグマの1つである。ビッグバンによりこの宇宙が生まれ、飛び散った元素が一定量ならば、宇宙と恒星・惑星の成り立ち、生物の進化さえも一定方向にあるはずだと本書の著者は主張し、解説していく。地球が形作られる反応の順位から、たんぱく質の反応順位さえも予測出来るはずなのだ。
本書の説は、生物学からみた進化と生体内の化学反応しか知らない自分のようなシロウト科学好きにとっては新鮮だ。近年の分子生物学にも一致する。しかしながらSF的なマインドやロマンは減るだろう。炭素原子が渡す腕の数が生物を生んだのなら、他の元素を中心にした生態系は成り立たないのだ。「星屑から~」とロマン溢れる題名だが、それがちょっと減る一冊である。

初版2017/12 化学同人/ソフトカバー

2018.01.18

書評<サルは大西洋を渡った>

地球上の生物はどのように生まれ、拡散・分断され現在に至るのか?ダーウィンの進化論およびヴェゲナーのプレートテクニクスの定着以後、主流となっていたのはパンゲア大陸で進化した生物が、大陸移動により分断され、またそれぞれに進化した「分断分布説」であった。ところが近年、現在の生物のDNA分析や行動分析により、風や海流といった自然現象により多くの生物が大洋を渡ったとする「分散分布説」が台頭してきている。本書はその「分散分布説」がどのように研究され、理解されてきたかを解説する。

いかにも海水に弱そうな淡水の両生類がどのようにして海を渡ったのか?あるいはなぜ、大洋を渡る能力などなさそうなサルたちのDNAが、大西洋両岸のそれぞれの種で一致点があるのか?本書はそうした「分散分布説」の謎を明かしていく。DNAの分子時計ですべてを計算するのではなく、風が昆虫を運び、大河の淡水の固まりがそのまま海水中を移動する様をフィールドワークで解明していく。パラダイムの変化を指し示す、生物学の長編である。

初版2017/11 みすず書房/ハードカバー

2018.01.17

書評<レッド・プラトーン 14時間の死闘>

2009年、アメリカ軍はアフガニスタンにおける対テロ戦争から抜け出せず、各地で激しい戦闘を繰り広げていた。そんな中で、特に苦闘を強いられた陣地がある。前哨地キーティング。厳しい山岳地にある小さな陣地は小さな村や産地の斜面から射ち下ろされる位置にあり、まったくもって不適切な前哨であった。案の定、キーティングは撤退直前にタリバン達の総攻撃を受けることになる。

アフガニスタンでの対テロ戦争の中で、特に英雄的な戦闘としていくつかが伝わってきているが、本書はその中でももっとも激しく、犠牲が多い戦闘のあったキーティングでの戦闘を扱ったノンフィクションである。著者は多くの犠牲者を出した部隊<レッド・プラトーン>を率い、戦闘に参加した職業軍人である。詳細な戦闘の記録、当事者たちの証言をもとに、凄惨な戦闘と、兵士の英雄的な行動をリアルに描き出すことに成功している。計画的なタリバンの戦闘行動、味方であるはずのアフガニスタン人たちの不穏な行動、激しい銃撃戦。もともと不利な戦闘に、なんとか対応しようとするプロの歩兵、味方をなんとか助けようと悪天候や対空砲火に飛び込む上空支援の戦闘機や攻撃ヘリ。激しい戦闘で繰り広げられる中での点景がうまくまとめられ、読者に息もつかせない。さらにはリーダーたちの苦悩も描かれ、決断の重さも考えさせられる。現代の歩兵戦闘の一端を知ることが出来る傑作ノンフィクションである。

2018.01.16

書評<JKハルは異世界で娼婦になった>

クラスのカーストでは最上位に位置していた女子高生、ハル。彼女は交通事故にあい、助けようとした同じクラスのオタクとともにファンタジー世界に飛ばされてしまう。特別な力を持たないハルは、異世界の娼館で生きていくことを決意する。

いわゆる「なろう系ライトノベル」の形をとって、実はエロい小説ということで、ネットでは一時期かなり話題になった本作。都合の良い技術(シャワーとか)が批判の対象になったが、自分としては一緒に転生したオタクが彼女を守る、みたいなありがちな物語進行ではない部分に意外性を感じた。オタクが感情移入出来る物語ではなく、あくまで主人公はハルであり、いわばハルがキャバクラでのし上がる物語といっていいんだと思う。ヘタにバトル要素も含むので、物語がとっちらかってる感は否めないが。変化球的な異世界転生小説として、個人的になありだと思う。

初版2017/12 早川書房/kindle版

2018.01.15

書評<アリスマ王の愛した魔物>

大国に囲まれた小さなアリスマ国に生まれな、不細工な王子。彼はすべてのモノ、コトを数字として数え、計算していく。彼は数字と計算で国情を把握し、大国との戦争にも打ち勝っていく。臣民をコンピュータ代わりにして。彼の行く着く先はどこか。その他、バイクの人工知能という身近なテクノロジーから、異星からの侵略者まで、SFの大家が送る短編集。

本作は著者の長編連絡「天界の標」のような重厚な作品ではなく、軽やかな作品集である。ネットのデータ蓄積がバイクを通して世代を繋げる身近な技術SFから、たぶんにファンタジー世界の要素を含めながらも現代科学を絡めた表題作まで、著者の多様な世界観が詰まった一冊。軽く読めるが、何度も読みたい短編集だ。

初版2017/12 早川書房/kindle版

2018.01.14

EA-18G/VAQ-141 Completed

2018年の最初の製作は2018年ということで、ハセガワ1/72EA-18Gグロウラーにしました。
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EA-18GはEA-6Bプラウラーの引退に伴い、F-18/Fを大幅に改良して開発された電子戦機。機体各所に設置されたECMアンテナ、ALQ-99ハイ/ローバンドジャマーを搭載していることなどが特徴。いまや数少ない電子戦機として、格空母航空団に配備されています。
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ハセガワ1/72のキットは、2016年のCAG機塗装が再現できるデカールとパッチがセットされた限定版。2017年にはCAG機塗装が変更されたので、旧聞に属する塗装になりましたが、個人的にはこちらの方が好きですね。
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組み立てはまったくのストレート。コクピット付近はさすがにディテールが足りないので、気になる方は別売パーツが必要かも。塗装はカウンターシェイド、ガイアノーツのエナメルのウェザリング塗料で、ややキツ目にウェザリング。あんまりリアルに寄せて汚くするのは好みじゃないので、あっさりめにしてあります。
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自衛隊も導入するのではないかとウワサのグロウラー。搭載機器の運用やオペレーターの育成には相当のノウハウが必要だそうなので、買うと決まっても、戦力化は相当先でしょう。貴重な電子戦機の動向は、今後も要注目ですね。
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