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2018.02.26

F-18F"100th Years of Naval Aviation 1911-2011" Comleted

ハセガワ1/72F/A-18F"100th Years of Naval Aviation 1911-2011" 、完成しました。
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2011年はアメリカ海軍航空100周年ということで、多くのアメリカ海軍航空機に記念塗装が施されました。その中でも、VFA-122は異彩を放つデジタル迷彩を施され、注目を集めました。
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キットはハセガワ1/72をストレート組み。ただし、レギュラーキットは後部胴体のチムニーダクトなしのキットなので、後発の限定版のキットからパーツを拝借。追加パーツはファインモールドのシートベルトのみです。
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塗装はSyhartというデカールメーカーの製品を使い、機体前面のデジタル迷彩を再現。いつもならフラットブラックでシャドウを吹いた後にクレオスのC308を吹くのですが、全面デカール貼りつけということで、サーフェサーを吹いた後にC308を前面にべったり吹いてシルバリング防止に努めています。デカールに関しては発色は問題ないものの、やや固めで割れやすい品質。
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ぬるま湯でふやかした後、デカールを傷めないようになるべくデカールフィッターのみで貼りつけ、曲面のみ、剛力デカールフィッターを使用しています。もちろん、サイズが合わない箇所も多々あるので、基本的には現場合わせてカットしつつ貼ります。合計10時間くらいはかかりましたが、パズルみたいで見た目より苦労はしてません。充分な乾燥時間を取った後、半ツヤクリアーを吹いてツヤを整えています。
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最終的にスミ入れをしようかどうか迷ったのですが、あまりにうるさそうなので、一部のみ実施。
一見するとすごくめんどくさそうな作業ですが、分割もよく考えられており、現用機のデカール地獄に慣れている方なら、さほど問題ないかと思います。ドイツレベルとハセガワでサイズが違う部分があるらしく、デカールがやたら多めで目的のものを探すのがメンドクサイくらい。ただやはり、コンプリートしたときの満足感はありますね。
静岡ホビーショー合同作品展に持ち込むつもりですが、細部はアラがあるので、遠くから見てくださいね。
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2018.02.25

書評<イスラム教の論理>

神の啓示を集めた聖典であるコーランに依って生きるムスリムの論理は、欧米を中心とするキリスト教社会や民主主義を主体とする近代社会とは相いれない。ジハード、カリフ制、異教徒あるいは同じイスラム教徒へのテロ、女性に関する倫理観など、西洋社会に生きる我々には理解しにくいイスラム教の論理を、コーランから説明を試みる。

「イスラム国が発信する論理は、コーランから見ると肯定せざるをえない」。これを書いているだけでも、非常に率直なイスラム教の解説であると思う。”イスラム教は本来、平和な宗教である”などというおためごかしを否定することからでしか、昨今のテロの頻発は説明できない。イスラム教に関して、近代民主主義とは相いれないが非常に納得のいく論理が展開され、ポリティカルコレクトネスによって分断される昨今の欧米の状況を考えれば、西洋社会が標榜する民主主義の傲慢すら感じてしまうのだ。欧米の首脳たちが受け入れようとする「イスラム教徒」は、彼らの価値観の枠内に収まることを余儀なくされているだけであり、そこから離れた”本来の”イスラム教徒と衝突が起こってしまうのは、当然の帰結といえる。
インターネットの発達により、これまで民主主義や各国の制定法に縛られていたイスラム教徒がコーランの本来的な解釈に触れることが出来るようになった。これが近年のイスラム教の論理を厳密に守ろうとする諸現象の根源であり、イスラム教と西洋社会の価値観の摩擦は増加するばかりであろうと本書はそう警告する。約20年前、「文明の衝突」という理論が流行したが、本当の文明の衝突はこれからである。

初版2018/02 新潮社/新潮新書(kindle版)

2018.02.24

書評<15時17分、パリ行き>

2015年8月21日、15時17分にアムステルダム駅を出発した高速列車はパリに向かっていた。その乗客の中に、気のおけない幼なじみ3人のアメリカ人の若者グループが乗り合わせていた。その車内に、イスラム過激派の男が重武装して現われた。大きな犠牲が発生するはずだったテロは、乗り合わせたアメリカ人の勇気ある行動によって防がれる。そこにはどんな物語があったのか?実際に起こった事件を詳細に綴ったノンフィクション。

軍属ではあるものの、決してエリートではなかった2人と、カリフォルニア在住の普通の若者。3人はいかに大規模テロを未然に防いだのか?主人公たちの視点を中心に、過去と現在を交錯させていく。
この「英雄物語」のテーマの中心は”導かれる運命”といったところだろうか。”ヨーロッパ周遊旅行”を楽しんでいた主人公一行は、ヨーロッパで出会った女の子たちから「パリは感じ悪い。行かない方がいい」と言われていたのにも関わらず、高速鉄道に乗車した。乗車前に身障者を介助したゆえに、最初に乗ろうとした車両に乗らなかった。そしてテロリストともみ合いになったときに、カラシニコフが起こしたジャム。偶然が、勇気を奮い起こした神が若者たちを助けたのか?英雄譚というよりは、運命を考えさせられるノンフィクションである。


初版2018/02 早川書房/ハヤカワ文庫NF

2018.02.23

書評<極夜行>


探検家として、著述家として知られる著者は、数年前からグリーンランドのシオラパルクという世界最北の小さな村に通い、交流しながら新たな冒険を準備していた。太陽が地平線の下に沈んで姿を見せない、極夜と呼ばれる長い漆黒の夜の中、グリーンランドを横断しようというのである。
著者のポリシーによりGPSを使わずに、厳しい冬を踏破する冒険。ゆえに六分儀の取り扱い方の学習や、食糧デポの準備など、万全な準備を数年に渡りしていたはずだったが、自然と運命はそんなに甘くなかった。アクシデントだらけの冒険行から著者は生きて帰れるのか?とにかくトラブル続きのノンフィクション。

著者としては”何もかも予定通りいかない”、そんな冒険行を綴ったノンフィクションである。日本の日常から抜け出して非日常に飛び込むとはいえ、多くの危険が潜む極夜行に著者は多くの準備時間を費やしていた。なのに、天測機器を出発早々になくし、季節外れのブリザードに巻き込まれ、備蓄していた食料を奪われ…トラブルはあげればキリがない。著者はそんな状況におかれてもたえず思考し、危機を乗り越える。むしろトラブルのおかげで、読者である我々にとっては極夜におかれた人間の精神と肉体の状況を疑似体験出来るのかも知れない。
山あり谷ありそのもの、何度も読む価値のあるノンフィクションである。


初版/2018/02 文藝春秋/ハードカバー

2018.02.22

書評<絶滅危惧種ビジネス:量産される高級観賞魚「アロワナ」の闇>

アクアリウムという趣味は、大金が絡むビジネスである。その中でもアジアアロワナの希少種は富裕層の投機の対象にもなっており、東南アジアでは養殖も盛んである。著者は3年半かけて世界15カ国の「現場」をめぐり、最初は熱狂的なコレクターや世界屈指の養殖業者を訪ね、そのビジネスの実態を取材。そうした中で探検家ハイコ・ブレハや魚類学者の出会いから、ボルネオの奥地やミャンマーの交戦地帯まで、希少な野生のアジアアロワナを探索に足を向けることとなる。

熱帯魚ビジネスの中でも、高価な部類に入るアジアアロワナの取引と野生種の実態を探りながら、ワシントン条約や新種ハンターといった部外者が知りえない世界を探求していくノンフィクション。美しい淡水魚とは思うが、その価値が分からない著者が野生種を追いかけていく様こそ、何かに取りつかれたコレクターそのものといえる。絶滅危惧種ビジネス、フィッシュマフィアなどと物騒な言葉が並ぶが、それゆえに知的な興味がそそり、どんどんその世界が知りたくなる。著者は読者のそうした興味を共有しつつ、気まぐれな探検家と奥地に分け入る。遺伝子組み換えによるアロワナの品種改良ビジネスまで登場しようとする状況で、野生種の価値とは何か、ワシントン条約とは何か、そうしたことを読者に問いかける。単なる裏ビジネスの告発ではない、そんな一冊である。


初版2018/01 原書房/ハードカバー

2018.02.21

書評<オリンピック秘史 120年の覇権と利権>

これを書いている現在、韓国で平昌オリンピックが開催されているが、南北朝鮮の合同チーム出場など、オリンピックの”政治利用”に事欠かない大会であったことは間違いない。だが、近代オリンピックはその当初から、崇高な理念とは別に、政治や経済との絡みに事欠かないスポーツ大会であった。本書は近代五輪の父、クーベルタンの時代から現代まで、オリンピックの舞台裏を明かしていくノンフィクションである。

あらゆるものがそうだが、オリンピックもまた、その理念を変えながら発展してきた。当初は女性の参加は歓迎されなかったし、黒人も同様である。また、オリンピックはアマチュアリズムからプロフェッショナリズムへと、商業主義への転換の歴史でもあり、オリンピックを経済や政治の転換点に使おうとする国家に事欠かない。本書はそうした歴史を明かしていく。特に近年はオリンピックの大規模化により、開催国家や自治体に過大な負担をかけ、巨大企業とIOCだけは巨大な利潤を上げながら、地元住民は搾取に苦しむという「祝賀資本主義」そのものになりつつあることが問題視されている。オリンピックの開催地に立候補しようという国、自治体はもはや少数派である、近年の経済のグローバリズムと同じく閉塞感を感じざるを得ないのだ。
果たしていつまでオリンピックとスポーツが「大衆の麻薬」「経済的搾取」であり続けるのか?そんなことを問いかける一冊である。

初版2018/01 早川書房/kindle版

2018.02.20

書評<アルテミス>

人類初の月面都市、アルテミス。地球とは違う環境で生きるためのルール以外はわりと緩く、雑多な人々の集合であるアルテミスで、主人公ジャズは零細密輸業者を営んでいる。ジャズはアルテミス有数の実業家から仕事の依頼を受ける。それは企業買収のための破壊工作だったが、多額の報酬に目がくらんで仕事を受けるジャズ。だが、それはアルテミスの存続の危機につながる事件のきっかけに過ぎなかった。著者が軽妙な書き口で送る、SF×ミステリーが本作である。

「火星の人」で陽気で前向きなギークを主人公にした著者の、次に選んだ舞台は月面。そして主人公はおてんば(というには年食ってるが)な女性である。非合法な商売にも手を出すが、基本的には自分の正義をとおすジャズ。そしてそれを、父親をはじめとした大人たちがなんだかんだで助けて、アルテミスの危機を救う。初期のウォシャウスキーシリーズを思い出さずにはいられない物語。それでいて、物理と経済の法則は曲げない、キッチリとしたSF。見事である。映画化も納得。

初版2018/01 早川書房/kindle版

2018.02.19

書評<暴君誕生――私たちの民主主義が壊れるまでに起こったことのすべて>

アメリカ国民はなぜ、政治経験がなく、発言内容が過激なうえにコロコロ変わる変人を大統領に選んだのか?本書はローリングストーンズ誌のコラムニストが大統領選に密着して大統領選の実態について取材し、アメリカ国民がいかに愚かな選択をしたか、その要因を書き記していく。

まず著者は、基本的に上から目線でトランプ大統領の選挙活動を批評する。後の大統領となるトランプ氏と同様に変人ばかりの共和党の大統領候補選び。まるでリアリティーショーのごとく、大統領選挙をスキャンダル豊富な娯楽のように報道するマスコミ。
確かに愚かな大衆とマスコミかも知れない。だが、そうしたワシントンのインサイダー目線こそが、トランプ大統領誕生の要因ではなかったか?2016年の選挙はリベラル的なポリティカルコレクトネスと、現実社会の乖離に飽き飽きしたいわば下層民の反乱なのではないのか?著者こそが、そうしたアメリカ国民の分断を見失っていたのではないか?そう思わずにはいられないコラムの集合体である。著者のようなリベラルな目線、共和党支持者を見下す目線こそが、裏返しとしてのトランプ大統領への支持であると思う。そこが正されない限り、今のアメリカは変わらないだろう。大衆の麻薬であるはずのハリウッド映画業界や音楽業界でさえ、庶民とかけ離れ、支持を失う世界に、我々は生きている。

初版2017/12 ダイヤモンド社/kindle版

2018.02.18

書評<黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い>

国政選挙、地方選挙に関わらず、マスコミは泡沫候補、本書の著者が無頼派候補と呼称する候補者が立候補する。彼らはマスコミに取り上げられることはないが、供託金を支払って選挙活動を行う、立派な候補者だ。著者は地知事選挙などを通して、彼ら無頼派候補の立候補の動機と選挙活動の実態をリポートする。

正直なところ、家族や親族に政治家か政党活動家でもいない限り、代議士選挙に立候補しようと思わないのが日本の現状だ。それでも政治家になろうとする時点で”変わり者”扱いされる日本の風土の中で、立候補しようとする彼らの主張と選挙活動に密着取材したものが本書である。
正直なところ、無頼派候補のなかには社会人としてどうよ、という人物も多い。だが、彼らのような候補を受け入れ、少数派の意見をくみ上げるのも民主主義である。現に、欧米では正統派の政党から立候補する、正統派の政治家ではない人物が自治体の首長や大統領になる時代だ。政治の世界は変わりつつあるのだ。
翻って日本はどうか?民主党政権の大失敗により、保守本流が大きな力を持っているのが現状である。それが変わるには、やはり無頼派候補の活動いかんにかかっているのだ。どうにも頼りない現状の野党に変わる、無頼派候補が日本にも表れるのか?無頼派候補に注目は集まるような選挙も見てみたいものである。


初版2017/11 集英社/kindle版

2018.02.17

書評<我々はなぜ我々だけなのか アジアから消えた多様な「人類」たち>

我々ホモ・サピエンスは現在のところ単一種であり、他のホモ属、本書でいうところの「我々ではない人類」がいない、珍しい種である。だが、かつては多くの土地に我々とは違う人類が存在していたことが明らかになっている。ジャワ原人、北京原人、ネアンデルタール人などが良く知られている。ホモ・サピエンスは出アフリカの後、世界に伝播したことが明らかになっているが、彼らはどういう運命を辿ったのか?我々との生存競争に敗れ、絶滅したのか?また、混血はあったのか?そもそも、他の人類は出アフリカであったのか?人類学者は化石の発掘により、多くの謎を解き明かそうとしている。

今、アジアの人類化石の発掘が非常に盛んであり、多くの化石から人類の伝播の歴史の謎が明らかになりつつある。出アフリカ人類がどのように分散、分岐し、ホモ・サピエンスだけが生き残ったのか?遺伝子解析の結果とともに、現時点での最新の研究結果をレポートする。小さな化石の小さな違いが、多くの歴史の分岐点を示唆する、ゾクゾクする研究だ。大洋と様々な大きさの島と海峡の存在がアジアでの人類の分散のポイントであり、我々だけが生き残った理由もそこにある、というのが著者の”感触”だ。我々より古い人類は島に渡り、亜種を生んだが、ホモ・サピエンスは伝播の速度が速く、亜種が生まれる間もなくアジアに生息域を拡げたらしいのだ。まだまだ研究が続く分野の、興味深いレポートだ。

初版2017/12 講談社/ブルーバックス

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