書評<暴君誕生――私たちの民主主義が壊れるまでに起こったことのすべて>
アメリカ国民はなぜ、政治経験がなく、発言内容が過激なうえにコロコロ変わる変人を大統領に選んだのか?本書はローリングストーンズ誌のコラムニストが大統領選に密着して大統領選の実態について取材し、アメリカ国民がいかに愚かな選択をしたか、その要因を書き記していく。
まず著者は、基本的に上から目線でトランプ大統領の選挙活動を批評する。後の大統領となるトランプ氏と同様に変人ばかりの共和党の大統領候補選び。まるでリアリティーショーのごとく、大統領選挙をスキャンダル豊富な娯楽のように報道するマスコミ。
確かに愚かな大衆とマスコミかも知れない。だが、そうしたワシントンのインサイダー目線こそが、トランプ大統領誕生の要因ではなかったか?2016年の選挙はリベラル的なポリティカルコレクトネスと、現実社会の乖離に飽き飽きしたいわば下層民の反乱なのではないのか?著者こそが、そうしたアメリカ国民の分断を見失っていたのではないか?そう思わずにはいられないコラムの集合体である。著者のようなリベラルな目線、共和党支持者を見下す目線こそが、裏返しとしてのトランプ大統領への支持であると思う。そこが正されない限り、今のアメリカは変わらないだろう。大衆の麻薬であるはずのハリウッド映画業界や音楽業界でさえ、庶民とかけ離れ、支持を失う世界に、我々は生きている。
初版2017/12 ダイヤモンド社/kindle版
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