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2018.02.20

書評<アルテミス>

人類初の月面都市、アルテミス。地球とは違う環境で生きるためのルール以外はわりと緩く、雑多な人々の集合であるアルテミスで、主人公ジャズは零細密輸業者を営んでいる。ジャズはアルテミス有数の実業家から仕事の依頼を受ける。それは企業買収のための破壊工作だったが、多額の報酬に目がくらんで仕事を受けるジャズ。だが、それはアルテミスの存続の危機につながる事件のきっかけに過ぎなかった。著者が軽妙な書き口で送る、SF×ミステリーが本作である。

「火星の人」で陽気で前向きなギークを主人公にした著者の、次に選んだ舞台は月面。そして主人公はおてんば(というには年食ってるが)な女性である。非合法な商売にも手を出すが、基本的には自分の正義をとおすジャズ。そしてそれを、父親をはじめとした大人たちがなんだかんだで助けて、アルテミスの危機を救う。初期のウォシャウスキーシリーズを思い出さずにはいられない物語。それでいて、物理と経済の法則は曲げない、キッチリとしたSF。見事である。映画化も納得。

初版2018/01 早川書房/kindle版

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