書評<陰謀の日本中世史>
日本中世史、幕府と朝廷の支配が交差し、様々な地方の武士がのし上がってきた時代には、様々な陰謀論が存在する。代表的なものが「本能寺の変」であろう。”黒幕”の存在がいろいろな論者から唱えられるが、果たして真実はどこにあるのか?分厚い日本中世史の知識を持つ著者が、日本中世史の中の陰謀論を検証していく。
「陰謀論」はいつの時代にも、どこにでもある。アメリカなど、月着陸やケネディ大統領暗殺、あるいは9.11同時多発テロの”真実”は別のところにあると信じる人が人口の半数にものぼるそうだ。それは日本も同じで、歴史の中には陰謀論が溢れている。日本史は戦後の定説が新資料の発見によって覆されているので、余計に歴史解釈が分かれるのかも知れない。
本書で特徴的なのは、古参の学者の唱える陰謀から、突飛で新奇な新説まで、基礎資料を読み解きながら的確に反論していることであろう。当時から現在に伝わっている書物の傾向を丁寧に読み解いて、複数の資料をあたり論説を組み立てる著者の唱える”反陰謀論”は、非常に説得力がある。また、戦後のマルクス主義や唯物論に捕らわれた戦後の日本中世史解釈を批判する著者ならではの解説も新鮮だ。
ワタシのような日本史勉強初心者に、日本史の勉強の仕方を教えてくれているような本であった。
初版/2018/03 角川書店/角川新書
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